七月七日 ああ、雨が降りそうだ。さっきまで晴れていたのに灰色になっていく空を見上げて呟いた。 「まごうとなき曇天…」 やがて小雨だがはらはらと雨がふってきた。ああ、買い物なんて来るんじゃなかった。でも食料つきかけてたしな、最近零崎も一緒に食べるからちゃんとしとかないといけないから仕方ないか。 買い物袋を右手に、のろのろ歩く。 小学校の前を通ると、傘をもった子たちが下校している。そうか、傘をもって来れば良かったのか。 小学生以下の自分の脳にがっかりしたがよく思えば僕は天気予報を知る術が無かった。 とりあえずもうどうでもいい。仕方ないもんは仕方ないと割り切り、またのろのろ再開。 突然目の前にバッと音を立て小さな青い傘が開いた。 「一緒に帰ろ!」 勿論僕に言った台詞ではない。 どうやら男の子が友達の女の子にいった様だ。 盗み聞きするつもりはないが、聞こえてしまった。 「短冊になにかいたー?」 そういえば今日は7日か…世間一般にいう七夕。 でもこんな雨じゃあ天の川は見えないだろう。逢い引きは来年に持ち越しだろうか。 1年まってやっと会えると思ったら、また1年まてなんて。 なんつーか、リアルに耐えられそうにない。 (毎日会ってるあいつに1年も2年もあえないとか) そんなことを思っていたら雨が大粒になってきた。 なんだか泣いているような雨。 川が結構なスピードで流れている… 濡れて引っ付いた前髪をかき上げて、川沿いを歩く。川の向こうでは傘をくるくるまわして歩く人。 そいつは橋を渡って僕に傘を傾けた。 「ハロー織り姫、迎えにきたぜ」 にかり、と入れ墨を歪めて笑う。 「ありがとう彦星。この雨でよく天の川渡れたね」 「かはは、氾濫寸前だったがいーたんへの愛の前ではとるにたらない敵だったさ。でも頑張ったご褒美にちゅーしてくれてもいいんだぜっ!」 まったく、にこにこしちゃってこの彦星は。 「ところで零崎。君がほんとに彦星で僕がほんとに織り姫で、一年ぶりの再開なのにナイアガラの滝並の勢いで天の川氾濫してたらどうする?」 んー?と、即答した。 「カヌーでいく! あと1年とか無理だから俺だったら毎日会いに行くね」 「それじゃ織り姫と彦星の話じゃなくなるよ」 だけど欲しかった回答が返ってきたことが素直に嬉しくて。 「頑張って迎えに来てくれてありがとう」 相合い傘で 内緒の キス [*前へ][次へ#] |