世界の中心へ.B
 


 出会っては、いけなかった。

 ただぶつかってしまうだけなら良かったんだ。でも今回はわけが違う。
 ああ駄目だ駄目だ駄目だ。
 裏方が舞台へ、『脇役』が世界の端から中心へ連れてこられた。
 その場から急いで逃げたのに。

「おい、まて」

 追いかけられた彼に名前を呼ばれて、突然目が覚めたような感覚がした。
 セブルス・スネイプ。本来、関わりを持たない設定の人物。が、私の教科書を抱えている。

「これは、お前のだろう?」
「え、うん……」

 駄目だ、と私の心で声がする。反響するように繰り返し聞こえる。だけど鼓膜には、彼の声で私の名が響いている。心臓の高鳴りも相乗されてうるさいのに、彼の声はよく耳に届いた。

「スリザリンでマグル学か……変わってるな」
「ま、まあ、よく、言われます」

 これ以上関わりをもってはいけない。第六感が告げてくれる。私の意識が鮮明になってゆく。夢から覚めるように、覚醒するように、徐々に。

「……君は、七年生か?」
「あ、はい。……そう、です」
「そうか……」

 セブルス・スネイプは私のことを知ってはいけなかった。動悸が激しくなる。
 そして、ある感情が私を少しずつ染める。

「私は君のことを……」
「……あっ、あの、すみません、用事があるん、で」

 もう耐えられなかった。彼から逃げるように――いや実際逃げてるようなものだけど――走った。
 これ以上、接点があってはいけない。
 ああ――、ダメだ。

 どうしよう、わかってしまった。
 私の存在は脇役なんかじゃない。

 絶対に出会ってはならない関係が、交わってしまった。
 出会ったことで、私の色が鮮明になり、輪郭がはっきりして。気づいてしまったんだ。
 私は本来、世界の外にいた。
 世界の端とか脇役じゃない。

 部外者、だったんだ。
 物語に登場する本当の登場人物ではなく。誰かが勝手に追加した、オリジナルキャラクター。(それと、突然湧き上がった感情)
 私が存在する目的は、おそらく、セブルス・スネイプとの――、

(――セブルス・スネイプ、との?)

 彼との何だと言うのだろう。私はちょっと笑っていた。理由はわからないけど、多分、自嘲の。


 

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あきゅろす。
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