幻騎士厳禁の段
 


 ある晴れた日のこと。とうとうミルフィオーレボスの白蘭がキレた。

「もういい加減にしてよねグリチネ隊!!」

 ことの始まりはグロ・メア両者の提出した書類。それに関係ないものがサンドイッチされていたというのだ。

「ね、何これ!僕こんな趣味ない!」

 白蘭が机に叩きつけたのはDVD『淫乱テディベア』。は?淫乱テディベア?と思った方、決してググってはいけない。

「ヒヒッ」
「ヒヒッ!じゃないし。グロ君いい加減隊長辞めさせるよ!?あと、これ!これはメアチャンでしょ!」

 先ほどと同じく机に叩きつけたのは何やら薄い本。ていうか同人誌。

「『ダブルハード』クリムゾンかよ!」
「読みました?」
「読まないよ!」
「悔しいっ…!でも読んじゃう…!ビクビク」
「だから読んでないって!」

 白蘭は怒りを通り越して狂いそうだった。自分は冷静な方だと思っていたが、グリチネのこの二人には冷静が通用しない何かがある。アホという何かが。

「僕もう限界、死にそうだよ…」

 その時だった。白蘭の部屋の扉が思い切り開いたのは。

「大丈夫ですか白蘭さぶぁぁあああ!!!!!」

 幻騎士が髪を振り乱し血走った目を見開いてまるで鬼神のごとくそこに居た。ヤバい超怖い、というのが三人の感想。

「ちょっ幻騎士クン、ノリが某BASARA」
「大丈夫ですか死にそうだと聞きましたがあいつらですかあの二人のせいですか許さん大丈夫ですよ今始末しますから白蘭様白蘭様ハァハァ白蘭様ハァハ……うっ!……ふぅ」
「やだなにこの子、うわわズボンにシミが大事で駄目なところにシミが」
「大丈夫です、今私の頭は大変に冷めてますから」
「その冷めた頭で考えてみてよ、今の事大を。見てみてよその股間を」

 幻騎士が何を想像したのかスタンディング・マスターベーションをした。その状況を見て、グロ・メアの二人は初めてボス可哀想だと思った。白蘭は涙目である。

「もうやだこのマフィア」
「お可哀想に白蘭様…、さあこのマシマロでもお食べになって下さい。その間私は、あの二人を…殺す!」
「うん、マシマロ…、マシマロ(´;ω;`)」

 マシマロを頬張る白蘭を存分に眺めた幻騎士は、傍観していたバカ二人を振り返り殺気を露わにして幻剣を構えた。

「白蘭様の害となる者は…殺す!」
「おい貴様殺すしか言ってないぞ」
「まさかハハハ私たちも白蘭を殺そうとなんてしてないですし、ねえ?」
「そうだそうだ、そーうだ!」
「白蘭、だと?白蘭様を呼び捨てにするとは!羨ましいなんたる不届き者!もう殺す!」
「どうする、話が通じなさそうだヒヒ、目がイってるぞこいつ」
「目と目だけで通じあえりゃ、こんなこたないのに」

 そう言いながらも二人は指輪と匣を取り出した。対して私(作者)は、始まりそうな戦闘シーンに震えを抑えられない。

「もしかしたら初めて戦闘シーン&シリアス展開になるかもしれませんよ」
「ヒヒッ、それも面白いな。お前も初めての戦闘だ。おい、試しに開匣しろ」
「はい」

 ……。
 …………。
 ………………。
 シーン。

「開、匣…?」
「知らない、だと…」
「マイコーだったらギリギリ。ポゥ!」
「少し黙ってろ不謹慎な。まて、今調べてやるから」

 グロは携帯を取り出していじり始めた。メアはそれを覗き込み、幻騎士はさながら戦隊モノヒーローの変身シーンを待つ敵怪獣のように大人しく待った。

「携帯のネット位出来るんだぞ。もしもの時は一生一緒にWikipedia、だ。えー、家・庭・教・師・ヒッ・ト・マ・ン…」ポチカチ
「リボーンだけででてきますよ」
「なにっ!…リ・ボ・ー・ン…あ、本当だな…。10年後の道具、と。リングに死ぬ気の炎をだな…こう匣に……で開匣」
「ははあ、なるほど」
「…!おい!幻騎士の項を見てみろ!」
「…匣能力…幻海牛ですか」
「他にも幻剣、だと。もう攻略したも同然だな。Wikipedia最高。幻騎士、敗れたり」
「……おや?隊長、この項は?」
「どのだ?…。……ッッ!?なにっ!?…り、真・六弔花…だと!?」
「どうやらこの真六弔花の方が本物のようですね」
「では私は何だ…?原作では顎を粉々にされたきり早一年放置された私の立場は?白蘭殿!!一体どういうことだ!!」
「!!し、知らない…原作の僕に聞いてよね」
「おいこら貴様ら!白蘭様が怯えてらっしゃるだろうが!もう許さん、殺す」
「あ、ああ、そういう展開だったな」
「ふふ、私の匣は一体どういうものなのか…試させて頂きますよ、幻騎士さん」
「お前そんなキャラじゃないだろう」

 三人は開匣した。ミルフィオーレ(笑)
 グロは雨イカ、幻騎士は幻海牛、そしてメアは、
 全長は1.2m程度はあろうか。鳥だ。目を引くのはその巨大なくちばし。大きすぎるといっても差し支えはない。フラミンゴのような足。目線は鋭く、灰色の体は何にも染まらない。大きいくちばしをぱこ、と鳴らした、その鳥の名は!

「ハシビロコウさんですねわかります」

 グーグルで画像検索してみて下さい。
 結果、メアの匣の中身は雨ハシビロコウだった。
 突然のハシビロコウにあっけをとられた一同だったが、気を取り直して構えた。さあ戦闘が始まる!そんな時に!

「待て!今何時だ」

 幻騎士である。焦った様子だ。

「丁度三時ですけど」
「何ぃ!!1日に24回ある白蘭様へのお祈りの時間じゃないか!俺は帰る!」
「えっ!幻騎士チャン行っちゃうの!?」

 グロたち二人と自分だけで、また一緒の空間にいたくないようだ。白蘭のチワワのごとき目に、幻騎士は慈母のような笑みを浮かべて言った。

「私はあくまで幻騎士ですから」


 


あきゅろす。
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