変態は変態を呼ぶ
 


 それは、いつもの日常だった。グロ・キシニアは気ままに猥談をし、メア・ジュノーはそれに付き合い、ジンジャー・ブレッドは隊長の代わりに仕事をする。騒がしいグリチネ隊隊長の部屋。明るい風景。
 そう、それはいつもの風景だったのだ。
 ――あの二人が来るまでは――。



 第4649話『崩壊、そして――』



 耳を覆いたくなるような卑猥な話に花を咲かせていたグロが、突然黙り眉をひそめた。猥談を耐え忍んでいたジンジャーは少し安堵する。

「なんだ、廊下が騒がしいようだな」

 その言葉にメア、ジンジャーの二人は扉に目を向けた。確かに、誰かが扉の向こうで暴れるようで騒がしい。

「私が注意してきましょう」

 空気を読んだメアが立ち上がる。グロが口を開いた。

「外の奴らに『大人しくしないと私の淫具が火をふく』と言ってやれ」
「ラジャー、『ケツの穴突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたろかい』ですね」
「あー良かった。これ『大変だ変態だ』だ」

 普段手抜きまくりな地の文がちょっと真面目でビックリしたよ、とジンジャーは言う。
 その時。扉が勢いよく開き、大声が聞こえた。

「グロ!俺と姫を匿ってくれ!」

 部屋に入ってきた人物は、ユニをいわゆるお姫様抱っこしたγだった。彼の息は荒い。

「γか……どうした、何の用だ?」
「話は後だ!奴が……奴が来る!ええいこのクローゼットの中に入れさせてもらうぞ!」
「お、おいそこは……!」

 AV収納場所!とグロが言ったときには、既にクローゼットが閉まるところであった。そしてγの悲鳴が聞こえる。

「うわあああ!姫、見てはいけません!」
「……乱れる人妻、嫌よ嫌よも好きのうち、よがりまくりのイキまく
「姫えええ!音読もお止めください!
おいてめえグロキシニア!こんなもん姫の目に付くとこに置くんじゃねえよ!」
「じゃあなんだ、貴様の好みのものでも置けばいいのか。男と男がくんずほぐれつ絡み合うホモのAVでも?」
「うるせッ、おまッ、俺がホモだって喋んなよ!姫には内緒だろうが!

 皆さんはおわかりいただけただろうか。そうこのγという男、ロリコンのようでいて実はホモだったのである。本人は隠しているつもりのようだが、周りにはバレバレ。これにはさすがのユニも苦笑い。

バレバレ愉快ですよ、γさん」
「女は黙ってろ」
やっべ僕忘れられてね?

 最後の発言者はジンジャーです。危うく空気と化してしまうところでした。

 やいのやいの騒いでいると、誰かの走る足音が聞こえた。

「!あいつだ!きた!いいかお前ら、俺と姫がここにいるとこ黙ってろよ」

 そう言ってγはクローゼットの中で静かになった。あいつとは誰だ?と三人が疑問に思ったとき、部屋に新たな客が訪れた。

「失礼、入江正一だ。ここはチューベローズ隊の部屋で間違いはないな?」
「そんなディープキスみたいな名前じゃないんだけど」

 チューベローズ…花言葉:危険な快楽。

「グリチネ隊ね」
「ああそれは失礼、ジンジャー・ブレッド。イヤらしい隊だと聞いているから」
「まああながち間違いじゃないね」
「ところで、入江さんは何のようです?」
「新品淫具でも借りにきたのか?」
「それは魅力て、いや何でもない。じゅるり
「うわじゅるりとか言ってる」
「ここにγとユニたんが来なかったか?」

 三人は顔を見合わせた。確かに入江正一はユニ『たん』と言った。

「ユニたん?」
「そうユニたんだよ!ちっちゃくて可愛いほっぺぷにぷにユニたんだよ!僕はちょっと抱きしめてむぎゅむぎゅ萌えーってしたかっただけなのに、γがユニたんもってっちゃってさあ!」
「ミルフィオーレ終わった\(^0^)/」

 ジンジャーは悲嘆した。 どうやら正一は、

「入江殿、まさかロリコンで?」
「子供好きと言ってほしいな」

 ロリコンのようである。

「ミルフィオーレってあれですね、性的な意味で犯罪組織ですね」
「僕なんでこんなところにいるんだろうな」

 もっともな意見だが、誰も賛同はしない。ジンジャーのような常識人はもはや絶滅危惧種なのだ。

「で、ユニたんいるの?いないの?」
「さあ……見かけませんでしたな」
「ああ、そう……邪魔したね、僕はもう行くよ」

 幼女趣味は去った。クローゼットから安堵の嘆息が聞こえた。

「ふうー……行ったな。姫、出てきて下さい。いやいや、AVはそこ置いといて下さい駄目です、置いて!そんなバッチいもん触らないの!
「誰だお前」
「さて、一難去ったところでグロ、頼みがある。姫を預かっていてくれ」
「構わんが、なぜだ」
「……ちょっと男漁りにいってくる」

 最後はぼそりと呟いてγは風のように部屋から出て消えた。

「逃げたな」
「逃げましたね」
「ユニどうするの?ここ託児所じゃあないんだし」
「ビデオでも見せておけ。ガキはテレビが大好きだからな」
「仮にもブラックスペルを纏める人なんだけどな、この人」
「私に任せて下さい。こう見えてやはりガキは嫌いです」
「じゃあ何で見栄張るんだ」
「まあまあ。じゃ、ユニ様。私とビデオでも見ましょう」
「……これ見たい」
「ははあ『夜の秘密の看護婦たちシリーズ』ですね見ましょ」
や め ろ
「構わん、見せておけ見せておけ。勉強になる
「何のだ!嫌な大人だなあんたら!」





「『ベッドの上の婦警シリーズ』でもいい……」
「誰かユニも止めて!」


 


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