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金縛りの法則(ヤン金)

一歩進めば、一歩下がる。
二歩進めば、二歩下がる。


「ヤン!何で逃げるんだ!!」
「そっ、それは君が近付いて来るからだよ!」

**********

偶然にもラインハルトとヤンの休みが重なり、久しぶりに2人揃っての休日を過ごせることになった。
昼前、約束の時間を少し過ぎてからラインハルトの邸宅にヤンがやって来た。

さて、どうしよう?

外は天気が良く気温も丁度良い。だが、どこかへ出掛ける気にはなれず、2人は庭にある東屋でチェスを楽しむことに決めた。
アーチ型の東屋は薔薇の蔓に覆われ内側には適度な光が射し込み過ごしやすい。

使いの者にチェス盤、それから軽食と少々のブランデーを加えた紅茶を運ばせた。
間にチェス盤を挟み向かい合って、備え付けの木製ベンチに座る。紅茶にひとくち口をつけ、先手のラインハルトが白の駒を動かしゲームスタートだ。

**********

「ヤン、どうしたのだ?」

局面が進むにつれ、ヤンの様子がおかしいことに気付いた。
ゲームはまだ序盤で迷うような手ではない。
それなのにヤンは考える素振りをし、度々手が止まる。

「えっ?…いや、何でも」
「どこか調子でも優れないのか?」

身を乗り出し覗くように下から見上げれば

「わぁっ!?」

わざとらしいぐらい肩を跳ね上がらせ飛び退いた。

「……何だソレは」
「えっ、あっ、はは、は…」

しまった、と言わんばかりに目を泳がせ頭を掻くヤンの態度が気に食わない。

その態度の訳を問い詰めるため立ち上がって近付くと…ササッ、素早い動作で横へ逃げた。

「なっ、何だい?」
「………」

もう一歩近寄れば、また横へ…更にもう一歩……横へ……………

「動くな、ヤン!」
「じゃあ君も止まってくれよ!」

ラインハルトが近付く度、ヤンが座りながら横へ移動するので2人の距離は縮まらない。

しかし、ヤンは気付いていなかった…と言うか忘れていた。
ベンチは東屋の内側に円形に取り付けられており、これに沿っていくと、いつか出入口に辿り着き逃げ場を失うことになる。

「…あっ!」

真横に迫る柱に気づき、ヤンはそれ以上逃げられないことに気付いた。

「さあ、ヤン!もう逃げられないぞ!」

ヤンの頭の横に両手をつき、逃がさないよう上からラインハルトが覆い被さる。

「わわわっ、チェスは!?続きはっ!?」
「それは後回しだ!先にお前の不自然な態度の理由を教えろ!」
「何で君はそんなに楽しそうなんだよー!」

上から徐々に距離を縮めてくるラインハルトの隙をついて逃げ出すことも押し返すこともできない。
ヤンはこれ以上小さくなれないほど身を縮こませてみるが、もう限界だ。

「ミューゼル君!」

少しきつめに呼び掛けたら急にラインハルトの動きが止まる。
反応のなくなったラインハルトを見上げると、先程までの笑みは消え、眉間に皺を刻み口をきつく結んだ不機嫌な表情に変わっていた。
怒らせてしまったのだろうか?
心配になって再度呼んでみる。

「ミューゼル君?」



「ラ・イ・ン・ハ・ル・ト!」
「へっ?」
「ラインハルトだ……名前で呼ぶって約束、しただろ」
「…あっ」

そう言えば…こうやって2人で会うようになって何回目かの時、互いに名前で呼び合うようにと(半ば強制的に)約束させられた。
年上である自分が呼び捨てで呼ばれることに抵抗はない。
…だが、一般市民の自分が彼を呼び捨てることなどできるはずはないのだ。
これまでは「君」等と曖昧に誤魔化してきたが、どうやらそれもここまでのようである。

(と言うか…この子はこんなことで不機嫌になったのか…)


「ラインハルト…く、ん」
「………」

意を決して!呼び捨て…に近い形で呼んでみたが、それで納得するラインハルトではない。
遂には口を尖らせ目も反らされた。

「ラ……ラインハルト」
「んっ?なんだ」

望み通り名前を呼び捨てで呼ぶと、明るい声で直ぐに返事が返ってきた。
そこには年相応の笑顔もあり、ヤンはまた逃げ出したくなる。
それを察してか、ラインハルトはヤンの襟元をきつく掴んだ。

「はぁ……何だか倒錯的だ」
「?、いきなり何だ?」
「だって…私が今の君の年齢の時、君はまだ物心もついてない訳だろ?」
「それが?」
「…君に触れる度…悪いことをしてる気分になる」

一回りも年が離れているこの少年と自分の関係はなんだろうか?友人…と呼ぶには抵抗がある。
では、どう説明すべきなのだ、この関係を…


苦しそうに地面を見つめるヤンから手を離しラインハルトは静かに横に座る。
ハッキリ言って、ヤンの悩みがラインハルトには分からない。自分はヤンとたまに会って、話をしたり出掛けたり…それが楽しいから今も一緒に居るのだ。
一緒に居たいから一緒に居る…簡単なことなのにヤンには分からないのだろうか?

「…ヤンは攻める時はあんなに激しく攻めるくせに、案外、小さなことを気にするんだな」
「それとこれとは、また話が違う…って、はぃぃっ!?」

危うく聞き流すところだったが、ラインハルトは今、何かとんでもないことを言ったのでは!?

「いっ、今、何て!?」
「だから、今更だぞ!…俺達は今こうして出会って話をしているし、俺はこの関係に満足している…ヤンは違うのか?」
「それは…」

違わない。
自分と彼の気持ちに差はない。
だが、友人の枠に収まらない何かが自分の中にあるのも事実で…それに気付かない振りが出来なくなってきているのも、また事実だった。


「うっ!」

ドスン!いきなり胸に衝撃を感じ声が漏れた。
ヤンの胸に背中を預ける形でラインハルトがもたれ掛かってきたのだ。

「ラッ、ラッ、ラインハルト!?」
「んー?うるさいなぁ」
「何やって!?」
「こう天気が良くちゃ眠気を抑えるなんて無理だ」
「…分からないでもないけど」

ラインハルトの柔らかな髪が口元をくすぐる度、顔が熱くなる。

「それなら、ちゃんとベッドで寝なきゃ」

ヤンの一言にパチクリ、蒼氷色の瞳が開かれた。

「…なんだ、ヤンも一緒に寝たいのか?」
「えぇぇっっ!?」
「俺は構わないぞ、俺のベッドは広いから2人ぐらい大丈夫だ!」
「そっ、そう言う意味じゃ…」

ヤンの返事を待たず、起き上がったラインハルトは意気揚々と庭に飛び出す。
そして、途中でこちらに振り向き、早く早くとヤンを手で招いた。



一人前に大人の表情をする時もあれば、無邪気に年相応の笑顔で笑ったり…コロコロと表情を変える年下の少年に、良いように振り回されている自分に苦笑しつつも、ヤンは彼の元へ急いだ。


************
ハルト(15)・ヤン(27)…そんな感じのパラレル。
世代ギャップってかハルトギャップですねヤンさん!^^
別にわざわざ12歳差にしなくても良かったですよね提督!^^

坊ちゃまハルトに気に入られ遊び相手になるヤン。ハルトに気に入られるのは、ほんとミラクル。
ここら辺の設定はちょっと曖昧にしといて下さい。何パターンか用意しちゃってるので^p^*ウホッ決めらんない←

今回は押せ押せ!ハルト!!な展開だったけど大人の余裕ムンムンなヤンも好きです^^それにあてられてるハルトはもっと好きです^^

そうそう、この2人健全なお付き合いだから、友達以上親友未満だから。
途中ハルトが攻め云々言ってるのは勝負事に挑むときのヤンの姿勢云々だから。

…うん!ヤン金ってむつこいね!金ヤンに見える切なさ(><;)
誰か私に正しいヤン金を教えてください・・・




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あきゅろす。
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