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暖かさに包まれて(エミ金)

「はぁ…」

紅茶を淹れながらエミールは軽いため息を吐いた。

「どうしたのだ?何か悩み事か?」

いつも、元気なエミールにため息など似つかわしくない。
気になったラインハルトは差し出された紅茶を一口、口に運んでから尋ねる。

「へっ?あっ!…もっ、申し訳ありません…何でもないんです」

エミールはそう言うが、一瞬伏せられた目をラインハルトは見逃さなかった。

「何でもない、という雰囲気ではないが…」
「本当に…何でもないんです」

これ以上聞いてもエミールは答えないだろう。無理に問いただしたところで解決に繋がる訳ではない。

「そうか…もし、悩み事があればいつでも言ってくれ、余でよければだが…」
「そっ!そんなっ、陛下のご迷惑になります!!本当に大丈夫ですから、お気になさらないで下さいっ!」

ラインハルトが少し寂しそうに見えたのでエミールは慌てた。自分のことを気にかけてくれるだけでも、身に余ることだったし、それ以上に心配して声を掛けてくれたのだ。もう、充分過ぎる程である。
だが、それを上手く伝えられなかったことで目の前のこの方を傷付けてしまったようだ。

(どうしよう…陛下に相談すべきなのかな?でも、こんな私事で陛下のお時間を削るわけには……どうしよう!!)

相談すべきか、誤魔化すべきか、判断つきかねる事にエミールは、わたわた、と両手を振る。

そんな彼の胸元から白い封筒がひらり、と舞った。

「ん?なんだコレは…」
「ああっ!!」

それは図らずもラインハルトの机の上に落ち、彼の目にするところとなった。

“愛しのエミール・フォン・ゼッレ様”
“貴方を慕う者より”

そこには可愛らしい丸文字が記してあった。


「…これは…」
「あのっ、陛下っ、そのっ」

慌てるエミールをよそにラインハルトの口からは笑みが零れる。

「フフッ、良かったなエミール、卿もなかなかやるではないか」
「へっ、陛下!?」
「そうだな、こういった悩みは余より…ロイエンタールの方が適しておるかな」
「へいか〜」
「いや、アイツよりもミッターマイヤーの方が…うん、良いな!」
「へっ、へいか…ひっく」
「なっ!?エミール!?」

しゃくりを上げ始めたエミールに対し、次に慌てるのはラインハルトである。

椅子から立ち上がりエミールの側に立つと、どうしてよいのか分からず手を出したり引っ込めたりして…いつもの彼からは想像できないような慌てっぷりだ。

「どっ、どうしたのだ?エミール!?」
「ひっく…うっく」
「泣いているだけじゃ分からぬ、ん?どうした?」
「ひっ、酷いですっ、へいかっ、うっく、からかわないでっ下さいっ」
「すまぬ、そんなつもりはなかったのだ」

どんなに声を掛けても泣き止まないエミールにラインハルトは困ってしまう。

自分より頭一つ分低い髪を撫で、自分より小柄な体を抱き寄せる。
それはすっぽりとラインハルトの胸の中に収まった。

「ふっ…うっえぇ」

胸の中でか細く震えるエミールに掛ける言葉が見つからず、ただ背中をぽんぽん叩く。

「すまなかった…エミール…頼むから泣き止んでくれないか?」
「………」
「うぅっ…まいったな」

はぁ、自らも気づかず内にため息を吐いて宥めるが、胸に抱いている少年が既に泣き止んでいたことをラインハルトは知らない。

(どうしよう…陛下が困ってらっしゃるのに…)

もう、大丈夫です。
そう言い出すことができない。
この胸の暖かさは心地良く離れがたいのだ。

(あとちょっとだけ…このままでも許されるかな?)

背中に心地よいリズムを感じながら、エミールはもう少しだけこの時間が続くことを願った。




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ふわふわほのぼのもふもふエミ金^^
微笑ましい2人の様子を横の机からヒルダが、執務室の扉の隙間からキスリングが、慈愛の眼差しで見つめているわけですね^^
そして、越えられない壁の此方から蜂山も熱い眼差しで見つめていますよ、陛下^p^




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あきゅろす。
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