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例えば僕が…(赤金)
“貴方の最も大事にしている二人が崖から今にも落ちてしまいそうです。彼等は崖の縁を掴み自らを支えています。両者を助ける時間はありません。一人を助けている間にもう一人は耐えきれず落ちてしまうでしょう。さて、貴方はどちらを先に助けに行きますか?”
誰しも一度は聞いたことのあるような質問がキルヒアイスの口から告げられる。
「何だ、それは」
「よく言われる例えです」
「聞いたことがないな。それは一体どういう意味なのだ?」
「意味など御座いませんよ。ただのお遊びです」
「遊び?益々解せんな。そもそも、例えが有り得ないのだ。お前と姉上が崖に居て、そして危機に瀕しているだと?俺が姉上をその様な危険な場所にお連れする訳がない!」
「あの…ラインハルト様…難しく考えないで下さい」
「それに、お前は男なのだから人の手を借りずに自力で上がってこい。その前に、そんな目に合わないようにしろ!」
「あの…だから…」
ラインハルトには納得のいかない質問だったのか。それから数分間、抗議と言う名の説教は続いた。
**********
「俺は姉上をお救いするに決まっている」
「ええ、ラインハルト様なら、きっと」
「何だ、理由は聞かないのか?」
「そのお答えが返ってくると分かっていましたから」
「じゃあ、何故こんな質問をしたのだ」
「さあ…何故でしょうね」
それきり、黙ってしまったキルヒアイスから視線を逸らすと、ラインハルトは言葉を繋げる。
「せっかくだから理由ぐらい教えてやろう」
「ラインハルト様?」
「簡単なことだ。お前は助けてなどやらなくても、勝手に俺の元へ帰って来るからな…どこへ行っても必ず俺の元に…」
「………ッ」
「どうだ、違うか?」
「ふふ、いいえ…仰る通りです」
「フン!お前のことなど手に取る様に分かるわ」
「ええ、本当に…困ってしまいます」
**********
「で、お前はどうなのだ?」
自分だけ聞かれるのは何だか癪で、同じ質問をキルヒアイスに尋ねる。
「私…ですか?」
キルヒアイスは今、気付いたと言うような顔をし、しばらく考え込んだ。
「俺にだけ聞いておいて自分は答えぬなど許さぬぞ?」
「…そう、ですね」
悩むキルヒアイスを見、ラインハルトは一つ思い付いた。
(しまった…どうせならロイエンタールかミッターマイヤーを例えに出してやれば良かったな)
その方が面白い。
キルヒアイスの答えは容易に想像することができる。
むしろ、彼にはそれしか選択肢がない筈だ。
だが、選択肢のない質問程つまらないものはない。
ラインハルトは答えを聞いたら、次は部下の二人を引き合いに出そうと思った。
「私は…ラインハルト様をお先にお救いします」
「なっ…なんだと!?」
自分の予想していた答えと違う返答が返ってきたことにラインハルトは驚いた…そして、気に食わなかった。
「お前は姉上を見捨てるというのか!」
「ラインハルト様、それは違います」
「では、何故だ!」
「……アンネローゼ様の所へは、私より先にラインハルト様が駆けつけになるでしょうから、私の出る幕は御座いません。それに…」
「それに、なんだ?」
ここで、キルヒアイスは言葉を詰まらせた。
そして、少し、続きを探す素振りをして、ラインハルトを真っ直ぐ見つめ直す。
「…それに、ラインハルト様はご自分を労るのが不得意な様ですから…僭越ながら、私がお救い致したいのです」
「………」
「だから、どうぞ、私がお傍に居ることを許して下さいますか?」
「……今更だ」
「そうですね。ですが、いつも私がお傍に居ることを、どうか忘れないで下さい」
「…分かっている」
「約束ですよ?」
「分かっていると言ってるだろうが!!」
「はい、ラインハルト様」
怒ったような口調でキルヒアイスから顔を逸らすラインハルトだが、逸らした横顔とその耳は微かに赤く染まっていた。
キルヒアイスはそれに気付くと自然と笑みが零れたのだった。
――――――――――――
初めて書いた銀英小話です。初めては赤金でv
この尻切れトンボな終わり方には訳が・・・ええ、蜂山が2人の甘々に耐え切れなかったのです。読み返してみても未だに・・・バッ、バカ!!このバカップル!!・・・な感じで恥ずかしくてモダモダしてしまいます。書き直したいけど読み直すのが苦痛、でも書き直したry・・・無限ループです^p^
赤金は無意識のうちに甘ったるくなるので砂糖漬けにして美味しく戴きたいものですね!(?)
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