それが恋、それが愛
3
「んー、おいしい」
「パン1つだけで足りるのか?」
「俺、少食だから」
「ほんと変わってないな」
俺と遥くんは誰もいない屋上でお昼ご飯を食べている。
午前の授業を終えた俺と遥くんは、屋上にやってきて、のびのびと昼休みを満喫していた。
とは言っても俺の食事はパン1個とイチゴオレだけで他から見ると少なく見える。
だけど、少食の俺にとってはこれがちょうど良い量なのだ。
ちなみにパンはクリームパン。
「あ、日野、この学校の噂聞いたか?」
「ふわは?」
突然そんな話をし出す遥くんに、俺はパンを咥えたまま遥くんに聞き返した。
「特に女子に人気らしいんだけどよ、」
「ん、ん」
「めちゃくちゃかっこいい男子が別クラスにいるんだってよ」
「かっこいい、男子?」
口からパンを離し、遥くんの話を真面目に聞こうと体ごと遥くんに向けた。
ちょっと気になる。
「確か、1組だったと思うんだけど、芸能人並にかっこいいらしい」
「……見てーかも」
「そこも変わってないな」
遥くんの話に興味を持つ俺に、昔のことを思い出したのか遥くんは、そう言ってはにかんだ。
俺は小さい頃からそういうことに興味を持ちやすく、いろんなことに首を突っ込む子供だった。
だから、結果、いろんなことに巻き込まれて、大変な日々を送っていた。
それでも子供の頃の好奇心は高校生になってもなくなっておらず、今もその男子が見たくてうずうずしている。
ただ、女の子に人気なのがちょっと頂けないが、気になるものは気になるもので、放課後、その人の教室を覗いて見ようかと、好奇心に負けた俺はパンを食べながら考えていた。
見るだけ、見るだけ。
そう思いながらも、俺の気持ちはわくわくしていた。
****
「えっと、…1−1組はっと………なっ」
遥くんから教えてもらった情報を頼りに、噂の男子がいる教室の手前に来た俺は驚いた。
…な、なんだよこれは?!
教室の前はたくさんの女の子で埋めつくされていた。
歩けない…。
その規模は廊下まで広がっていた。
それにしても、噂の人物が相当な人気みたいで、俺は想像以上に驚いていた。
そして、その光景を見た俺は、昔の嫌な記憶が蘇っていた。
…おっといけない、あれは封印したんだ…。
蘇った記憶を忘れようと心の中でぶつぶつ言いながら俺はゆっくりと首を振る。
今日は諦めよう…。
屋上に行って気分でも変えるか…。
そう思って俺は、階段を上って行った。
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