それが恋、それが愛
19
「ちょっと、話があるの」
「俺に…?」
「そう、…あなたによ」
ついてきてくれる?と姫香ちゃんに言われ、俺は戸惑いながらも、姫香ちゃんの後について行った。
****
人通りの少ない昇降口に連れて来られた俺は壁を背に姫香ちゃんと向かい合っていた。
非常に居心地が悪い…。
「私ね、椎名くんが好きなの」
「………」
突然話出した姫香ちゃんの言葉に何も言えず、俺は黙って姫香ちゃんの話を聞いていた。
「会ったときからすっごく好きで、誰にも取られたくないの」
「………」
「だから、椎名くんを取ろおとする人が嫌い…」
「………」
「だから、諦めてもらおうと思って、いろいろ意地悪しちゃった…」
「…………」
「でもね、………椎名くんに言われちゃった…」
「え?」
「あなたにこれ以上手を出すなって…」
「………椎名が…?」
「だから、日野くん…
消えてくれない?」
「………え?」
そう言った姫香ちゃんはとても不適な笑みを浮かべていた。
俺は無意識に喉を鳴らして、…姫香ちゃんに聞き返した。
「…姫香ちゃん…消えるって?」
「……死んでほしいわけじゃないよ、ただ、ここから出て行ってほしいの」
「……そんなの…無理に決まって…」
「邪魔なんだよね、とっても…」
「………」
姫香ちゃんからの言葉はどれも本気で、俺はどうしていいかわからなくなった。
「俺…」
「出て行くのはお前の方だ」
そう声が聞こえ、俺は昇降口のドアを見た。
そこにはすごい顔して立っている椎名がいた。
もしかして怒ってる…?
「し、しぃ、なくん…きゃっ」
「姫香ちゃんっ」
姫香ちゃんは椎名が現れたことに激しく動揺して、誤って階段を踏み外した。
俺は咄嗟に姫香ちゃんをかばって、そのまま2人一緒に階段を転がった。
その後のことは全く覚えてなく、最後に椎名が俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。
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