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それが恋、それが愛
18


「……お前、」
「…はは、水浴びはちょっと早かったかな…」
「…………」


そう言って俺は椎名にばれないように笑って誤魔化した。

女の子たちが俺をいじめる原因は椎名だってわかってる。
けど、…俺は椎名に言わない。

中学時代もそうだった。

不満はたくさんあって、椎名にぶつけたい気持ちがあるのに、こういう場面を椎名に見られたら俺は何も言えなくなる。


だって、
俺を見る椎名が


あまりにも哀しそうな顔をするから…。

俺は、その椎名の顔に弱い。



「……日野」
「俺、もう行かねーと」


「…………」

「やっぱ4月に水浴びは寒いな…」


そう言って、椎名の横を通りすぎようとした。


「……っ、待てよ」


そう言って俺は椎名に止められた。



「……腕、離して」
「お前…女子にやられたのか…」
「…違う」
「違うわけねーだろっ」
「…違う、女の子にやられてなんか…」
「日野っ」

「うるさいっ!」


そう叫んで俺は椎名の手を払った。



「……っ、…なんで俺には言わねーんだよ…」


「…椎名には関係ないだろ…」
「…関係ないわけねぇだろ…」
「………」


「……俺を頼れよ」



そう言った椎名に俺は抱きしめられた。

突然のことで頭がついてこない。

……ただ、椎名の体温が暖かくて、体が冷えていた俺はすごくその体温が心地よかった。




「……椎名、服…濡れる…」


「………気にすんな」

「………」


「………日野?」


俺は椎名のお腹を押して椎名から離れた。


「……ありがと……」


そう小さい声で言って俺は椎名から逃げるようにタンクの上から降りて行った。



****



「……へっぶし…」
「…日野、昨日は何もしてあげれなくてごめんな」
「そんなことないよ」


くしゃみをする俺を見て、昨日のことを謝る遥くんに俺は首を振って否定した。


昨日はあのまま帰って、俺はゆっくり家で休んでいた。
遥くんには連絡しておいたけど、家まで心配して来てくれて、いろいろ俺の話を聞いてくれた。

嬉しかった。

そんな遥くんだけど、やっぱり椎名のことは言えなくて、そのことだけはまだ話していない。
なんか恥ずかしくて言えなかった…。



「日野、今日は体育休んだ方がいいんじゃ…」
「……ん、そうする」


次の授業が体育で、俺の体調を心配した遥くんの気遣いに、俺は甘えることにした。


「それがいいよ」

「…じゃぁ、俺、保健室で休んどく」


「おぅ、…じゃあ、また後で保健室行くな…」
「うん…ありがと」



そう言って教室で遥くんを見送った俺は、保健室に行こうと椅子から立ち上がる。



「ねー、あなたが日野歩くん?」


教室のドアの前には女の子が1人立っていた。

確かあの子は1組の姫香ちゃん…。
1組の中で可愛いと人気の子だった。

俺になんの用だろ…。




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あきゅろす。
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