それが恋、それが愛
10
あいつからキスされて、1週間が過ぎた。
相変わらず女の子たちからの質問は絶えないけど、それ以外は、いつもと変わらず、椎名との接触もない俺はとても楽しく学校生活をエンジョイしていた。
「遥くん、平和ってのはいいものだね」
「…日野、気持ちはわかるけど、あんまり浮かれていると…」
「うおっ」
つるっと足をもっていかれ、俺は後ろに反り返った。
だけど、転けはしない。
「よっ、と」
そのままこけた反動をいかし、俺はばくてんを決めた。
シュタッと着地をし、ポーズを決めれば周りから拍手が起こる。
気持ちがいい。
「…日野、いつからそんな技を」
「へへへ、これは中2ときに生み出した」
「そう言えば、日野、よく転んでたな」
「そんなことない、それにさっきのだって、廊下が雨で濡れてたからで…」
「あー、わかった、わかった、それより早く行かないと体育の授業遅れるぞ」
遥くんにそう言われ、俺たちは駆け足で体育館に向かった。
いろいろ遥くんに抗議したかったけど、体育の先生が苦手な俺は、とりあえず授業を優先することにした。
あの先生、怒ると怖いんだよね…。
****
「……はぁ、俺のテンションガタ落ちだ」
「あー…、そう言えば今日は体育が1組と合同になるって、女子が喜んでたな」
「俺はぜんっぜん、喜べない」
「しょうがないよ、雨じゃどうしよもうないしね…」
「……はぁ、」
俺は盛大にため息をつく。
雨のせいで1組と体育が合同になったことが嫌でしょうがない。
それに、各自ストレッチしている俺の斜め前には、あいつ、椎名カイリがいた。
俺にキスをした最低野郎だ。
あの出来事があったおかげで俺はもっと椎名のことが嫌いになった。
そして、あいつを見て赤くなる俺も嫌いだ…。
「……なぁ、日野、やっぱ椎名となんかあった?」
俺の異変に気づいた遥くんが的確に名前を言って、そう聞いてきた。
「…何もない」
そんな遥くんに、俺は顔を赤くしながら、否定した。
「……じゃぁ、顔が赤いのはなぜだ」
「…体が暖まったからだ…」
「おりゃっ」
「おぉっ」
そう言って遥くんが俺の手をおもいっきり引っ張った。
お互い向かえ合わせで足を伸ばして前屈してたため、俺の股関節が悲鳴をあげる。
体は柔らかい方だけど、これは痛かった。
何気やるな、遥くん。
そんな感じで2人ふざけながらやってた俺たちは、後で先生に怒られた。
そして、授業の始めに体育館を5周走らされた。
やっぱ、あの先生嫌いだ…。
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