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それが恋、それが愛



「遥くん、パン買いに行こー」
「おー、今行く」


遥くんに声をかけて、購買にパンを買いに行く俺は、今日は何を買おうかと考えていた。

よし、今日は焼きそばパンにしよう。

そう決めて、準備が出来た遥くんと購買に向かった。




****



「あー、やっぱ、人多い」
「…購買のパンは人気らしいよ」


購買に来た俺たちは、人の多さに少し引いていた。

まだ二回目しか来てないけど、ここの購買はとても人気らしい。
買うのに少し苦戦する。

背が低いからでは決してない。




「…ちょっ、押さないで」


人が込み合う中を必死にかき分けてパンを取ろうとするが、そんな俺の奮闘も虚しく、なかなかパンにありつけなかった…。

とても苦しい…。





「ほらよ、」
「え?」


人に押しつぶされそうになっていた俺の頭上から声が聞こえ、それと同時に頭に柔らかい感触があった。

俺は何かと思って上を向く。

そこには俺をバカにして笑っているあいつがいた…。



「お前、小せぇからこういうとき困るな」
「…小さくねー!」


俺をバカにして嫌みなことを言う椎名に、俺は頭に乗せられたパンを取って、椎名を睨みつけた。

すると、周りがざわざわしだして、女の子たちが一斉に騒ぎだす。


そんな周りの反応に、やっぱり人気者は違うのか…、と俺は肩を落とした。

あいつとの違いに劣等感を感じている俺はとても虚しかった…。

そんな俺の思いなんか知らない椎名は、キャーキャー叫ぶ女の子たちを爽やかスマイルで翻弄しながら、購買から去って行った。


なんだよ、あの笑顔は。


そんな椎名の行動に、俺は、少しムカついた。

女の子たちにとる態度があまりにも俺の時と違っていて、腹が立った。



「くそぉー…あいつ、俺にはあんな顔しないくせに」


そう言った俺は、笑顔を振りまくあいつがムカついてしかたなかった。

持っていたパンを握り締める。



「……ムカつく」
「日野?」


俺のとこにきた遥くんが俺の顔を覗き込んだ。





「ますますかっこよくなってんじゃねーかぁぁぁ!」


俺は購買の真ん中で、一番の不満を叫んでいた。

周りの目なんか気にしない。

そう叫んだあと、あいつにもらったパンを見てみると、俺の苦手なあんぱんがそこにはあった。
形が少し変形していた。

嫌がらせかっ!





****



「苦手なら無理して食わなくてもいいんだぞ…」
「……もったいない」
「…偉いな、日野」


あいつが取ったあんぱんを微妙な顔しながら食べていた俺は少しむしゃくしゃしていた。

やっぱ、あいつ嫌いだ。

俺にこんな嫌がらせをしやがって、ほんとムカつくやつだ。


形がつぶれてしまったあんぱんを食べながら、椎名の地味な嫌がらせに腹を立てる。

苦手なあんぱんが憎かった。
俺はつぶあんは苦手なんだ…。


苦手なあんぱんを無理に食べていた俺に、遥くんが気になっていたことを聞いてきた。




「日野さ…、椎名と知り合いだったのか?」
「ぜんっぜん」



遥くんの質問に俺はおもいっきし否定した。



「…日野、怒ってる?」
「全く、怒ってないよ」

「…ジュースを握りしめながら言われてもな…」



自然と手に力が入っていて、ジュースを強く握りしめて怒っていた。



そんな俺はなんとか怒りを抑えつつ、遥くんに、あいつとは中学が一緒だっただけで、ぜんっぜん、知り合いなんかじゃないから!と念を押して訴えていた。


遥くんは納得したようだったけど、今度は眉を八の字にして俺に言ってきた。




「…けどよ、日野、気をつけた方がいいよ…」
「…何に…?」

「女子にだよ」


「女の子に?」


遥くんの言葉に疑問を持った俺は、なんで、と遥くんに聞いた。

そんな遥くんは、苦笑して、椎名が女子に人気だからだよ…、と俺の心配をしてくれた。


この数分後、遥くんが言っていたことを、身をもって経験するなんて、この時の俺は思ってもいなかった…。




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