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共同トイレ
今日は哉也と久々のお出掛けだ。
内容は至ってシンプル、晩御飯の買い出し。
忘れ物はないかチェックをして、僕らは意気揚々と家を後にした。




















「類斗、早くしろよ」
「待って」

学校から帰ってきてお互い着替えたら、早々と家を出る。
毎週一回だけの僕の一番の楽しみ。

「マスクは?」

聞かれて、はっとする。忘れてきた。

「ったく。ほら」

ガサゴソと鞄の中からよれよれの白いマスクが出てきた。
もしかしてこれって。

「使用済み?」
「いいからつけてろ」

この時期になると哉也は何かと五月蝿い。
やれインフルエンザが流行っているからだとか、風邪の予防だとかで、毎回外に出る時は必ずマスクをつけさせられる。

「ほら」

差し出された手を見て、僕は素直にそれに応じた。
傍から見れば仲の良い兄弟にでも見えるんだろう。

「あったかい」

ふふ、と笑って僕は哉也を見上げた。

「カナちゃんの手、あったかいね」




―――――――――




それは唐突だった。

「いや、痛い! 哉也、やめて!」

買い出しの途中、ご機嫌な僕とは裏腹にどんどん不機嫌になっていく哉也を見て嫌な予感はしていた。

「やめ、て」
「オマエが悪い」

なんのことか全く見当がつかない。

「でも、こんなとこでっ……!」

僕の必死の抵抗もむなしく、哉也は僕のズボンを早急にずらしてくる。

「手間かけさせんな」

バンッと音が鳴って僕はその場に崩れ落ちた。
哉也に蹴られたのだ。

「オマエは大人しく言うこと聞いてればいいんだよ」

ぽろぽろと勝手に出てくる涙を見た哉也は、何かのスイッチが入ったように僕を素早く押し倒してきた。




―――――――


「い、い゛たい、いだいよカナヤ」
「黙れ」

ガン、ガンと打ち付けてくる腰元。
痛みに耐え切れなくて出血してるのが見なくても分かる。

「っ……!」

そのまま、中で出された。




――――――――


「うっ……」

誰かの泣き声がした。
朦朧とした意識の中で、僕はそれに「大丈夫だよ」と応える。

「類、斗……また、俺っ……」


だいじょうぶ。

僕はほんとに大丈夫だから。

口には出せなかったけど、僕は小さく微笑んだ。



―――――――


「大丈夫?」
「あぁ」

共同トイレを開けるとそこには誰もいなかった。
当たり前だ。

誰かいたらきっと大騒ぎになってる。

「帰ろっか」
「そうだな」

今度は、僕から哉也の手を握った。
この手が離れないように。



そっと。

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あきゅろす。
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