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●§探偵事務所§●
殺戮バレンタイン(サイヤコネウロ?)
な・・・なんでこんな事に・・・

私の胸にはクロスされた白くて細い腕が絡み付いている。

背中に当てられた頭がスリスリと動いて
私の両手を塞ぐ買い物袋がカサカサと揺れた。

つまりは。

Xに捕まったらしい―――


『殺戮バレンタイン』


「こんにちは。探偵さん
元気してた?」

「はい。
おかげさまで今元気じゃなくなりました。」

満面の笑顔に蒼顔の笑みで返す。

現在私の手は、百貨店のお洒落ハムよろしく
木の枝から吊されている。

「なにそれ。つれないなぁ・・・。
せっかく脅かそうと思って後ろから抱きついたのに」

「つれなくても吊られているので勘弁して下さい。
むしろ驚き過ぎて心臓ぶちまけるかと思ったよ・・・。」

泣きそうな顔・・もとい、既に泣いている私の顔をXはペタペタと撫でている。

・・・傍らにちっちゃい箱が落ちてるのがすっごい気になるんですけど・・・。

「それよりアンタちゃんと俺に感謝してんの?」

「は・・・?何が?」
唐突なXの言葉についつい本音で答えてしまったが
ここは相手に合わせるのが大人のマナーと言うものだったか。
私、今人生の選択間違えたか。

「・・そっか、アンタは知らないんだ・・・。
500万・・・ブツブツブツ・・・」

Xは何事かを呟いて一瞬残念そうな顔をしたが、すぐにまた笑顔で私に問掛けてくる。

「でももちろん俺にもくれるよね。本命チョコ!」

本命チョコ?

確かに私の足下に落ちている袋の中には
バレンタインに吾代さんや笹塚さんにあげるため
王美屋で買った義理チョコがいくつか入っているんだが。
まさかそれをXが欲しがるなんて・・。
しかも本命って何。

「くれないの?」

Xはアゴに指を当てて可愛く言って来る。
いかん。コイツもあげなきゃ殺す気だ!

ネウロにしろXにしろ
なんでこの怪物コンビは疑問系=命令なんだろう。

「わかった・・・。」

やたらと疲れた声で答えると。
Xがきゃっきゃと喜んでいる。
でもチョコ一つで箱化を免れるんなら安いもんだろう。
そう思った所で
私は自分が吊されたままだった事を思い出した。

ネウロの毎日の虐待でこの程度の逆境は
良いのか悪いのか流せる程度まで成長していた。
まれに調教されたとも言う。

「わかったけどとりあえずコレ外してくんないかな。
このままじゃ渡すも何もできないからさ」

なんとか自分に言い聞かせてXに解放を懇願すると

「うん、こーゆーのって雰囲気も大事だよね!」

Xは喜気として笑う。
チョコくれた人をお礼に箱積めしそうな奴が何を言うかとか
思わなくは無いけど
まだ人型でいたいので勿論口には出さない。

「じゃあ口移しでお願いね♪」

Xの言葉に体が凍った。

実に嬉しそうにXは地面の袋からチョコを取り出すと
箱を開けて一粒摘み私の口の中にいれた。
ちょっと待て。
口の中って・・・

「いただきまーす♪」
誰かさんの決め言葉を奪ってXの顔がどんどん近付いてくる。
チョコはうまいがこれはマズイ。

Xの半開きの口が私に食い付こうとしたその時

ガシッッ

上から降ってきた魔人が力強く掴んだっ。

私の顔を。

ネウロさん。
普通逆です。

「X。何をする。
これは我輩の奴隷だ」

ネウロは私を掴んだ手越しにXに言い放つ。
「なんだ。もう来ちゃったんだ
つまんないの。」

私の息は詰まってます。
離してネウロ。
助けが来たのに逝きそうです。

「まぁいいや。探偵さん。
また今度ね。」

また今度何されるんだろう。
ようやくネウロが手を離すとXはすでに消えていた。

「はぁー。死ぬかと思ったぁー。」
色んな意味で。

「フム。」

安堵の溜め息をつく私をネウロはマジマジと見ている。

「これも良いな。中々。」
笑顔がヤバイ。

「もー!!どーでも良いから早く下ろしてよネウロー!!」

「ほう。どうでも良いのか?」

「良くないけど下ろしてよー!!!」

これでもかと暴れていると
ネウロが縄を切ってくれた。

「・・・ありがと・・・」

さする手を掴まれて
ネウロの口元に寄せられる。

ベロリ。

手首から痕が消えていく。
自然過ぎる行動に頬が熱くなる。

「ヤコ。
我輩にはないのか。」

私の手を舐めたまま
上目使いで魔人が聞いてくる。

「・・・何が・・・?」

解ってはいるけど。

「バレンタインは思い人に贈り物をする日だそうだな」

「だってネウロ食べられないじゃん。」

うつむいてイジケタように言う。

「そんな事はない」

「・・・え?」

顔を上げると。

袋からチョコを取り出すネウロの姿。

そして私を見つめながら口に入れる。

・・・あ。

ブッ!!

側を飛んでいたハトが落ちた。

「ほらみろ。
この通り生ゴミも我輩にかかれば弾丸の威力を持つのだ。

中々楽しいぞ。ん?

どうしたヤコ。」

私はその場にくず折れた。



・・・ハトさん、チョコレートさん
ごめんなさい・・・。

もう散々なバレンタインだ。

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あきゅろす。
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