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●§探偵事務所§●
赤い箱4(ネウヤコ笹塚)
「ネウ・・・・」

ガシッッッッ!!
「ぷぐぅっっっ!!」
名前を呼ぼうとした私の顔面を
ネウロの手が勢い良くワシ掴み、首が反り返る。

そのまま私の背中を引き寄せて腕を回し
お腹を抱え込むと
即座にネウロは笹塚さんから数歩引き下がった。

腰に立てられた爪に体が震える。

「駄目じゃないですか先生ー。
事件を放り出すなんて
そんな虫以下の行動に出られては困りますよー」

あくまで爽やかに言うネウロの腕は、
抱え込んだ私のお腹を準縄じゃなく締め付けてきて
危うくさっき食べたタコ焼きさんと再会しそうになった。

「嫌がられてるようだが?」

ネウロの腕の中で悶える私を見て
笹塚さんはポケットの中で手錠を鳴らす

「先生は照れ屋なんです。
もう随分一緒にいるのに未だに慣れて下さらなくて。
二人の時はあんな事やそんな事や
ましてはあんな事までしているんですが。」

まてまてまてまて
何だその大いに誤解を招く発言はっっ!!

冷えた頭を再び上気させながら
込み上げるものを焦って飲み下し
露骨に顔をしかめる笹塚さんに私は全力で否定した

「今のはじょーだんですから!!!じょーだん!!
この人よく変な事言いますけど信じないで下さい!!ホントに!!」

ジタバタ暴れながらわめくと
小さく這うようなネウロの声が、押し付けられた私の背中に響いて届く。

「何故そんなに否定する必要がある。」

条件反射で出た言葉に理由を求められ
答えを見付けられずに
とりあえずネウロの中から逃れようと必死で身をよじっても
腕は堅くてビクとも動かない。

「いかに豆腐頭の貴様と言えど
昨日の今日で我輩の言いつけに背いたのだから。
この後どうなるか位は勿論解っているのだろうな」

頭の上で怒気を孕んだ魔人がクツクツと笑っている

・・どうなるかなんて考えたくもないよ・・。

「そもそもあの刑事が貴様に何をしようとしたのか気付いていないのか?」

一瞬ネウロの言う意味が解らなくて
私を見下ろす緑の目を覗き込む。

いぶかしむ目を笹塚さんに向けると
さっきの近距離でのやり取りを思いだし、
ネウロの言わんとする事に思い至った。

思わず体がこわばってうつ向いてしまう。
でも笹塚さんは私を妹みたいに思ってるだけで。
ネウロは恋愛と親愛を勘違いしてるだけなんだ。

「違うよ・・。そんなんじゃない」

伝わる振動。
鼻で笑われた・・?

「やはり貴様はミジンコだな。」

一時は食物にまで進化した私のあだ名は
一気に振りだしに戻ったらしい。
ネウロは顔を上げると笹塚さんに向けて声をかける。

「それはそうと
こんな所で油を売っていていいんですか
刑事さん。」

ボソボソと小声で話す私達を、
笹塚さんはいつの間にかタバコをくわえながら眺めていた。

「俺、今日非番だから。」

「ほう。では仕事以外先生に何のご用です」
ネウロの挑発的な態度に怯む事なく
携帯灰皿に灰を落としながら

「別に・・。
いつも世話になってるから」

笹塚さんは落ち着いた声を返した。

「・・・・まぁ今日もなんだかんだで事件に巻き込んじゃったから・・・・。
今度また埋め合わせするよ・・。」

「そんな・・」
言いかけた私の口をネウロが塞いで

「以降、先生にご用の時は。
スケジュールを管理する僕に声をかけて下さい。」
笹塚さんは上を向いて煙を吐きだす。

「あんたを通したら一生捕まらないんじゃないの?」

ネウロはその言葉に胡散臭い笑顔で答えると、私を見下ろした。

「では我々は現場に戻りましょうか」

笹塚さんは車によりかかりながら
タバコの火を消して

「一応聞くが、乗ってくか・・?」

無論魔人の答えはNOだった。



事件現場に戻った時にはすでに日も落ちて
野次馬もほとんど消えていた。

ネウロのヒントで事件は簡単に解きほぐされ、
私自信がその全容を伝えたが
解りやすい私怨の犯行だったが為に
その謎は余りにも小さくて

終始無言のネウロに
私はいつになく反省して泣きそうになった。


でも泣きそうになった理由は他にもある。

今日の事で私は

ネウロに一歩近付きたくなってしまった

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