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バニラシロップを一滴だけ
キャラメルシフォンの手ざわり

「「最初はぐー」」

「「じゃんけんぽん」」

「あっち向いてほい」

「…また俺の負けかよ」

「零崎顔に出易いから」

「くそー、表情の豊かさが裏目に出たか」

「馬鹿正直な零崎君、三回連続で負けたよね?」

「う…」

「三回連続で負けた人は勝った人の言うことを聞かなきゃいけない」

「…」

「提案者は零崎の筈だけど」

「…ちぇ、俺の計画が…」

「ふぅん、残念だね零崎君」

「…何かいーたん怖くね?」

「別に怖くなんか無いよ?勘違いも甚だしいな」

(…怖!ていうか完全に怒ってんだろ!)

「君が可愛い女子高校生と親しげに話していた所にぼくが丁度通りかかってなんかいないからね」

(やっぱり怒ってたーー!)

「…ごめんなさい」

「謝らなくてもいいんだよ?君はちっとも悪いことなんかしていないんだからね」

「ほんとにごめんなさい」

「零崎が何に対して謝っているのかがちっとも分からないなあ、そこんとこきちんと説明してよ」

「女と話してていーたんを不安にさせてごめんなさい」

「へぇー零崎は赤いニット帽を被った可愛い女の子と話してたんだ。ああそれで零崎はさっきから頭を地面にこすりつけて土下座をしているんだね。ああ、それで合点がつくよ。畳を舐めたりしてくれなくてもいいのに零崎ってばほんとにぼくのことを愛してくれているんだなあ」

(そんなことしてないけどな!…そこまでしなきゃ許して貰えねえのか?たかが)

「妹と話してただけなんだけどな…」

「へえ、近親相姦か、親子揃ってよくやるよ」

「だー、もう!違うわ!!!」

「なにがどう違うんだよ」

「だから…あいつとはそーいう関係じゃ無いんだって」

「あいつ…ね、だったらその妹さんとやらぼくに紹介してよ。やましいことが無いなら勿論いいよね?あ、因みにこれがあっち向いてほいでぼくに負けた零崎への願い事だから」

(だったら断れねえじゃん)

「…紹介すればいいんだろ」

「うん、宜しく」

「で、いつ?」

「今」

「いまぁ?」

「…そんなに動揺してるってことはやっぱりやましいことが「無い!無いから!」

「じゃ、ぼくは今から客人をもてなす支度をするからその間に君の妹さんを呼んで来ておいてよね」

(怖……!)

「あ、お茶が無い。買ってくるね」

がちゃ、




「、ふぅ………」

どうしたもんかね

いーたんが嫉妬深いのは知ってたのになんたる失態

しかしあいつがお茶を用意しようとするなんてな

恋人の俺でさえ水道水以外の飲み物にはお目にかかったことが無いというのに

ま、大方俺と一緒に居たくないってのが本心だろうな

あいつは俺が守るって決めたのに、俺があいつを傷つけてどうすんだよ

泣けないなんてあいつは言うけどそんなの嘘だ

お得意の戯言に決まっている

今頃は一人きりで誰にも涙を見せず泣いているのかも知れない

誰かから愛されることが極端に苦手ないーたんは、

それでも俺を選んでくれた

だから、

俺は絶対にいーたんを不安にさせちゃいけなかった

そう決めたのに






…舞織には正直に話してここまで来て貰うしかねえな

あーまじ格好わりー

プルルルルルル

「…………」

ルルルルルルル

「…………………」

ルルルルルルルルルルルルルル

「…………………、」

只今、電話に出ることが出来ません
電波の届かない所に居るか―――

「おい、舞織さん勘弁してくれよ」

ぶつん、電源ボタンを押して考える




最悪の展開だ



どーするよ、俺

妹と連絡取れないとか言ったら益々暗転は確実だ


……今から土下座の練習でもしようかな




俺が土下座の練習をしていると、いーたんが帰ってくる音っつーか気配?がした

腹を括れ零崎人識!

いざ!ジャンピング土下座っ!

ガバッ
「ごめんなさいっ!!!!」





「………何してるんですか人識君」


「零崎……?」



えーと…


この声は



いーたん!!!


と舞織っ?!











***

「紹介遅れましたが、こんにちはいーさん!零崎舞織です!!」


「…………妹の舞織だ。宜しくしてやらなくてもいい」



「そんなに連れないこと言ってるとあのこといーさんにばらしますよ?いいんですかぁ?」


「おぃっ!舞織!あれは言わないって約束しただろうが!」


「んふー、冗談ですよぅ」


「………(怒)」



「おい零崎、」

「なんだよいーたん」

「本当に付き合って無いの」

「当たり前だろ」
「当然ですよぅ、舞織ちゃんには好きな人が居ますから」

「そう…だったんだ」

「誤解は解けたか?」

「ごめん零崎」

「俺の方こそ疑われるようなことしてごめんな」

「……っ、」

「あーもう泣くなっつうの」

「泣いて無いし、っ」


「うん、仲直りも出来たみたいですし、舞織ちゃんは帰ります。あ、雑誌はいつでもいいですから」

「おう、サンキューな」

「うふふ、礼には及びません。それじゃ、いーさんもさよならです」

「うん、ばいばい」

「かはは、じゃーな」








***

「ねえ、零崎。雑誌って何?」
「まだ秘密ー」



俺はそれを話した後の戯言遣いの反応を想像して、にやにや笑った


まだ秘密
いつかふたりで話し合おう





キャラメルシフォンの手ざわりで





その時君がしあわせでありますように







(なー舞織!一生に一度のお願い!)(…なんですか)(…いや、そのさあ、結婚のこと詳しく載ってる雑誌買ってきてくんねえ?俺男だしなんか買いに行くの恥ずいんだよ)(そんなことならいいですよぉ。あ、私も読みたいんで読んだら次貸して下さい。ゼクシィとかですよね?)(そこらへんはお前に任せるわ)(人識君ファイトです!)




あきゅろす。
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