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バニラシロップを一滴だけ
ニラシロップを一滴だけ

「なあいーたん」

「なんだいお馬鹿さん」

「ぐはっ…」

「ごめんって。で、何」

「この問題わからないていうか全部わからないから教えてよいーたん!」

「あれぇおかしいな。この問題は今日習ったばっかりなのにな。ああ、君は一日中寝てたっけ。だからわからないのか。失礼。こんな事にも気が付かないなんてぼくとしたことが「かははははっ傑作な事言ってくれるじゃねえかいーたん?」

「まさか、ぼくがそんな事考えてる訳ないじゃないか。戯言だよ。だからそのナイフを仕舞ってくれないか」

「物分かりが良いいーたんが好きだぜ」

「傑作だ…。で、どの問題?ああ、食塩水の問題ね。ちょっと待ってろ、今解くから」

ええと…なになに?
300gの水に15gの食塩を溶かします。この食塩水の濃度は何%ですか。



え……………
零崎こんな簡単なのも分かんないの?
もっと応用めいた問題が分からないのかと思ってた

果たしてぼくはこいつと一緒に中学校を卒業できるのだろうか


軽く絶望した

「なあなあー。いーたーん」

「何だよ今ぼくは君の問題を解いてるんだけど」

「っいーたん…、なぜ食塩水は食塩水なの?食塩水だなんて聞いただけで口の中がしょっぱくなるわ…」

「(…気持ち悪…)…何が言いたいんだよ」

「だからさ、俺はこんな感じにすれば良いと思うわけだよ」

筆箱からマッキー(黒)を取り出した零崎は、ぼくから問題用紙を受け取って、キュキュ、と何か書き足した

「ん」

差し出された紙を見て、ぼくはほとほと呆れて溜め息をついた

「零崎…君って本当に胃袋キャラが抜けないよね」

問題の《食塩水》の《食塩》の所をマッキーで塗りつぶし、その近くに《砂糖》の文字

「ていうか問題の難易度は変わって無いよね」

その前にそもそもこの問題に難易度なんて無いと思う

問題の右上の五段階の難易度表記を見てぼくは考えた(★☆☆☆☆)よりによってレベル1

「君が甘党なのはよくわかったよ。それで、そもそもなんでこんな事言い出したんだ?」

「いや、別に特に理由は無い。なんか急に頭に浮かんで来たんだよ」

「ふぅん、可哀想に」

「かわっ……?!今さり気なく酷いことを言っただろう!」

「あ、」

ぼくはそう言って窓の外へと視線を外した
バッ!と過敏に反応してぼくの視線の先を辿る零崎

それを視界の隅で確認してから、
「いうえお」

「……………」

固まる零崎

隠蔽工作は見事成功した


但し変わりに殺人鬼からのただならぬ殺気をゲットだぜ

人が青筋立てて怒ってんの初めてみた

そう言えば青筋ってどうやってたてるんだろう
うむ
今度練習してみよう

なんて傍観者気取ってみる
正確には現実逃避とも言う

「…おい」

「おいこらいーたん、聞いてっか」

「…なんだよ」

「この問題の答え、分かったんだろうな」

「普通分かるだろ」

「全部やっとけよ」

「…はあ」

「やっといてくれるよな?ん?」

「はいはい」

容易に彼を怒らせるもんじゃない
これじゃぼくの方が持たない

「なあなあいーたん」

「何でしょうか零崎さま」

「甘いよな」

「砂糖水が?そりゃあ当たり前だろ。なんせ砂糖が入ってるんだから」

「違う」

「へえ、じゃあ何が」

本当は全く興味が無かったが一応聞いておく

彼の機嫌取りだ

しかしこのパターンでは自ら泥沼に両足を突っ込むようなものだ
どうせまた下らない事だろう

「いーたんが、甘いなあって思ってさ」

思わず顔を上げると、予想通りの厭らしいにやにやした顔がそこにあって、ぼくを完全に見下していた

「なっ………!」

そして予想通りにぼくの顔も真っ赤に染まっているだろう

「ん?どうしたいーたんそんなに顔真っ赤にしちゃって」

「……うるさい」

「照れてんのか?いーたんは可愛いなあ」

「うるさいってば!」

ああもう最悪
これじゃあ零崎の思う壺じゃないか

してやったり顔の零崎を見て、一生こいつには敵わない、と頭の隅で考えた






バニラシロップを一滴だけ


ほんのり甘い、そんなキミとの関係







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