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バニラシロップを一滴だけ
キャラメルソーダに溶かし

桜が咲き乱れ土筆が生え盛る頃(つまりは春)、零崎家に一通の手紙が届いた

それを最初に発見したのは零崎舞織、花も恥じらう現役女子高生であった

「ほわー」

学校帰りポストを見る習慣がある舞織にとって、手紙が零崎家のポストに入れられてあるのを見るのは初めてのことだった

何故かって、零崎家と言えば殺し名序列3位

そうそう本拠地の住所などが割れる筈が無いからだ

それに、大抵零崎家は連絡のやりとりに手紙を使わない

証拠が残るし、手紙だけ抜き取られる場合があるからだ

だとしたら、


「むー、一体誰が誰に出した手紙なのでしょうか」


如何にもふぁんしーできゅーとな桜色の便箋を見て考えた

差出人は多分おんなのこ

こんな可愛らしい便箋は大抵おんなのこが使うものだ

もしかしたら私宛かもしれない

お兄ちゃん達にこんな可愛い手紙が届くはずが無い

ん?

私今結構酷いこと言ってませんでしたか?

まあいっか


便箋を改めて良く見て宛名と差出人を確認する


すると果たして便箋にかいてあった宛名は舞織の兄「汀目俊希」、差出人は「いー」という何とも性別の判断がし難い名前だった

「ややっ!人識くんにおんなのこからお手紙ですか!これは」

にやりと笑って舞織は言う



「双識さんに知らせないとっ!」












***

人識が学校から帰って来ると、玄関前に零崎家長兄、零崎双識が立っていた


険しい目で此方を睨みつけてくる双識に人識は、俺何かやらかしたっけな、と考えた


ま、とりあえず



「どけ変態」

「なんてことをお兄ちゃんに向かって言うんだ!お兄ちゃんは悲しいぞ!」

しくしくとその場で泣き真似を始める双識に、人識は早くも逃げ出したくなった

「ったく…兄貴は某ホスト漫画の自称キングも顔負けのうざさだな」

「なんだと!?私のイメージにぴったりなのはクールで格好良いた○しだと思っていたのだが!」

「全然違うから。たか○ファンに謝れ」

「全く人識くんは心も狭いし身長も低いなあ」

「ちょっと待て」

今のは明らかにただの暴言だろう

「というか変態はそっちだと思うよ人識くん。某赤頭巾漫画ではお馬鹿さんで可愛らしい狼少年のリ○ヤとキャラが被る癖に」

「なんでだよ。俺のキャラ構成のどこに変態キャラに間違われる要素があるっていうんだ。ていうかリー○も俺も変態じゃないぞ!○ーヤファン(管理人)に謝れ!それと、なんとなくキャラ被るなあ、って俺も前から思ってた!」

「しらばっくれるつもりかい人識くん!人識くん、私は知っているんだよ。人識くんはかわいいおんなのこと文通をしているんだろう!人識くんは隠しているつもりだろうけれど私にはお見通しだからね!人識くん!」

「あーもーうぜーな、何回人識くん人識くん言ったら気が済むんだよ。あと何気に俺の台詞を無視するな」

「まだ未成年だというのにそんなふしだらなことをして…」

「兄貴はコミュニケーション能力零か!?会話が一向に噛み合わないぞ!?」

「これを見ても直しらばっくれきれるかな?」

双識は背広から桜色の如何にもふぁんしーで(以下略)を取り出した

「!!!」

人識は途端に顔を赤らめ双識を睨みつける

「…返せ」

「…いやだ」

「何でだよ!その手紙は俺んだ!」

「私だってかあいいおんなのこと文通がしたいんだよう!えーん!人識くんばっかり僕っ子を侍らせて狡いよお!」

「きも!っていうか早よ返せや!」

「嫌だ」

「あ〜っもう!こんなことになるなら何時も通りに寄り道しないで帰って来れば良かったぜ」

「今までの分の手紙も回収済みだからね、人識くん」

「人の部屋に勝手にはいんなよおぉ!!あと中身は見てねえだろうなあ!?」

「ご愁傷様だねv人識くん」









***

《まいらばーいーたんへ

というわけで家族全員に文通がばれちまってさ

悪いけど写真撮って送って欲しいんだ
兄貴がいーたんの顔見たいって五月蝿くてさあ
俺ら遠恋だからあんま会え無いじゃん?
写真は俺も欲しいと思ってたんだ
つーわけで宜しくな!

あ、できれば澄百合の制服がいいなあv
あと兄貴から伝言でスカートの下にスパッツを履いていた場合は即刻人識と別れさせる!だってさ
どんまいいーたん
んじゃ、今日も明後日もずっと愛してんぜ、まいはにー


ゆあすいーとはにー俊希より》



うし!こんなもんかな!

「兄貴、写真送るように書いてやったから今すぐ手紙を全て返せ」

「えー?駄目だよこういうのは等価交換だろ?」

「わかったもう何も言わないから取り敢えず今日来た分の手紙だけはみせろ」

「まあその位ならいいかな」

何様だ兄貴

そろそろ殺して解して並べて揃えて晒したくなってきたぜ


俺はいーたんからの手紙をひったくると、兄貴の横をすり抜けて自分の部屋へと駆け上がった
途中で大将に「人識、階段は静かに上がれっちゃ!」とか言われた気がしたけど気にせず駆けていく

早くいーたんからの手紙が見たかったのだ

「〜♪」

自然と鼻歌を歌っていた

それだけ俺はいーたんにらぶーらぶーらぶーなのだ


封を切ろうとしてはたとする

そう言えば兄貴に中身は確認され済みなんだった

糞兄貴

あとで覚えとけよ

軽く機嫌が悪くなりかけたが気を取り直し、ひとまず手紙を読むことにした


《汀目へ

久しぶり
そっちは元気?
僕のほうは相変わらずだから心配要らないよ
ところで浮気してないよね
してたら哀川さんに突き出してやるからね
今日は特に何も無かったからあんま書くことが無いんだ
じゃ、そういうことでばいばい
君とは二度と会いたくないよ

戯言遣いより》


いーたんはなんというツンデレなんだ

一見酷いことばかりつらつら書かれているように見えるが、最後に《戯言遣いより》と書いてしまっているため逆効果になってしまっている

そうかそうか、いーたんは俺に会いたくてたまらないのか

ていうか今更だけどなんで今回に限って桜色の便箋なんだろう

俺は一人首を傾げた











***

「どうしよう……」

いつも通り学校から帰って来たら、汀目から手紙が来ていた


いや、手紙が来てること事態は凄く嬉しいんだよ
嬉しいんだけどさ…

その、内容が問題なのだ
写真を送るなんて恥ずかしすぎて出来ないよ!
しかも澄百合の制服を着て撮るの?
家族全員に見せるってどういうこと?
まだぼく汀目ん家に挨拶に行ったこと無いんだけど
ていうかスパッツ履いちゃ駄目なのかよ

頭を抱えてオロオロしていると、急にドアが開いた

「よおいーたん!素敵で格好良い潤さんが遊びにきてやったぞ!」

「潤さんーー」

「(いーたんが名前で呼んだ?!)なしたよ?」



「―――というわけなんですよ」

「ふむ。あたしが読心術使えて良かったな!常人はそれじゃさっぱりだぞ」

「潤さん、どうしましょう。ぼくの写真送らないと別れさせられるそうです」

「送れば良いじゃん。なんならあたしが撮ってやる」

「女装してですか?」

「うん。汀目くんのお兄ちゃんもすっかりその気だしな」

「……恥ずかしいんです」

「うーん…。じゃあさ、後ろ姿を撮って送れば良いんじゃない?」

「それで良いんですかね」

「良いんじゃない?ま、取り敢えず一枚撮ってみよう」


澄百合の制服を着てカメラを構えた潤さんの前に立つ

「はーい、後ろ向いてーはい、ポーズ」

カシャ

「撮れた撮れた」

「ふぅ……」

安堵感が押し寄せてきた


でもほっとしたのも束の間、不安が押し寄せて来た

後ろ姿ってかなり失礼なんじゃないだろうか

そんな写真送ったら汀目のお兄さんに失礼かもしれない

汀目はお兄さんのことを変態ロリコンとか言ってるけど、一方では紳士だという噂も立っているのも確かなのだ

スパッツ以前の問題で別れさせられるかもしれない


もう一回きちんと正面で取り直して貰わないと、汀目ともう会えないかもしれない

そうだ、
そうだよ

こんなぼく如きのプライドなんて捨ててしまおう


「潤さん。もう一回……ちゃんと取り直して貰えますか」

「!!ああ…いいぜ」

潤さんは酷く優しい笑顔でぼくに笑いかけた









「はい、ポーズ」

カシャ

「うん、よく頑張ったな」

「ありがとうございます」

「あと、重大な報告がある。………いーたん泣いてる」

「……………え、うそ…」

頬を触ってみると指が濡れた

もしかしなくても写真にも涙は写ってる訳で


「ちょ、潤さん!!もう一回取り直して下さいお願いします!」

「あー悪い。さっきのでバッテリー切れちゃってさ。あたしはさっきので良いと思うな!いーたん可愛く撮れてたし」

「まじですか…」

絶句

ああ、こんな写真汀目に見せられない



「よし、じゃああたしが汀目くんに届けといてあげるからさ。」

「何がよしなんですか…っ」


「ごめんいーたん。だからほんと泣かないで」











***

所変わって零崎家にて

「…………兄貴」

「…………人識くん」

「兄貴がスパッツ履くなとか変なこといーたんに強請るから泣いちまってるじゃねえかよおぉぉ!!!この変態ロリコン」

「人識!お前ってやつはどこでこんな可愛い子を捕まえて来たんだ!大体澄百合の制服着て欲しいって言い出したのは人識くんだからな!」

「〜〜、あーっもういーたんの可愛いおめめが真っ赤に腫れちまってるだろうがあ!」

「いーたんとやらをお兄ちゃんにも紹介してくれよ!」

「取り敢えず兄貴はいーたんと俺に謝れ!」

「なんで人識くんになんか謝らないといけないんだい!?何様のつもりだい?その子となんの関わりも無い癖に!」

「俺彼氏だから!!!!」





キャラメルソーダに溶かした



君に頼まれるとどうしても断れないんだ







end.




結構長い割に全くまとまりきれてなくてごめんなさい(゜Д゜;)
うん、色々回収出来なかった伏線かなりあるけど気にしたら負けですよ!

双識さんは某赤頭巾漫画のしいね〇ゃんのお父さんにも激似だと思います

そして恐ろしい程噛み合わない兄弟の会話←



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