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with love
04 once upon a time...


都合によりいー目線でお送りします



***
ぼく、いーこと井伊には、彼女がいる

中学3年生なんだし、普通じゃないかと思う人もいるかもしれないが、それは全くの見当違いだ




何故なら
ぼくは好きでもない人と付き合っているから
まさか脅されたの?チキンだなあと思った人、それも違うんだ
まあ、脅されたら付き合っちゃうチキンなのは認めるが

あれ?自分で言って傷ついたよ?


そうでなく、現彼女に告白された

告白されたことが無いとまでは言わないが、(けっこう多かったりする)シチュエーションが予想外だったのだ
それはそれは予想外な出来事だった


今でも鮮明に思い出せる


社会の授業中だ



「じゃあ、ここの答え解る人」

問いが難しかったのか、一瞬クラスは固まった

「勘でいいから、答えることが大切だぞ」

相変わらず誰ひとり挙手しないことに痺れをきらした先生

「指名するぞ。今日は、15日か、安直にいくと出席番号15番の人、といきたいが――ここはクラスでただひとり、豪快に居眠りかましちゃってくれてる紫木に答えて貰おうか」

クラスがどっと湧いた
紫木一姫こと姫ちゃんはそれでもまだ安らかに睡眠中

はっきり言うと苦手だったけど、隣の席だったので親切にもぼくは姫ちゃんを起こしてあげることにした

「姫ちゃん、起きて」

肩を揺すってやると僅かに反応があった

「ん…ししょお…?」

あー寝ぼけてる寝ぼけてる

「問い3できてる?」

「んふー、姫ちゃん前から師匠に言いたいことがあったですよ」

「おーい、問い3…」

「師匠が好きです!」


はあああああああああああ?



落ち着けぼく
これは夢だ
寝ぼけてる姫ちゃんがちょっと変なこて言わなかったか
え?こてってなんだっけ
ていうかぼく動揺しすぎ
嘘何どうしたらいいのぼく
クラスメイトの前であんな大声で告白されちゃったよ
お願いだから舞織ちゃん、期待に満ちた目で見ないでぇぇ!
あれ?これ結構恥ずかしいよ?






クラスメイトに期待に満ちた熱い目で見つめられたらぼくに逃げ道はない





「ぼ、ぼくも、だよ…………」


チキンとでもヘタレとでも最低とでも罵ってくれ

どうせぼくはチキンでヘタレで最低さ

さよならぼくの平和だった日よ






***
「それでですねー、姫ちゃんそこでビシッとこう指を突きつけて……って、師匠ー聞いてます?」

「ん?ああ、聞いてた聞いてた。確か世界におけるアパルトヘイトの差別問題についてだったよね?」

「ぅー師匠酷いです!聞いてなかったじゃないですか!この頃ずっと上の窒ですよ」

「上の空ね」

字面は似てるけどどうやって読むんだろう



「師匠…姫ちゃんのこと、嫌いですか?」

隣に目を向けると、今にも泣き出しそうな姫ちゃんの顔

ぼくは何をしているんだろう
自分が決めたことなのだ
姫ちゃんと付き合っていると言うのに、その彼女を泣かせ(未遂だけど)そうになるなんて、男の風上にも置けない


「まさか、ぼくが姫ちゃんを嫌いになるなんて有り得ないよ」

上手くやれるさ
やらなくちゃいけない









***
姫ちゃんとそんなやりとりをしたそのすぐ後、ぼくは私服に着替えてから塾に向かった


一応受験生だしね


ぼくはけっこう秀才だったりするので隣町まで電車で通っている
乗り換え駅に着いたので降りて、電車を乗り換える


電車を待っていると、なんだか背中に電流が走ったような感覚に襲われ、おもわず目を見開いた


この感覚―――
なんだ?



呆然としているぼくの目の前を誰かが通った


背が低い
真っ黒な髪の毛
ダッフルコートがよく似合う
女顔で、でも笑った顔はどこか男性的で


なんていうか
射竦められて
息を飲んだ

このきもちは、なんだ?



一瞬目が合っただけで
相手は男だというのに、ぼくの顔は真っ赤に染まった



だがその一瞬合った目もすぐに逸らされた

そのことに、なぜか虚脱感を覚えるぼくがいた






塾の授業中もずっとあの少年のことが頭から離れなかった


ぼーっとしている内にその日は呆気なく終わってしまった












「井伊?おーい、井伊ってば」

「へ?」
「お前この頃おかしいぞ?何かあったのか?」

気の置ける友人が、ぼくを気遣ってくれていた

「大丈夫、何も無いよ」

「ふーん、ま、いいけど。それより紫木待ってるぜ?弁当一緒に食おうってさ」


「…りょーかい」


なんだか気が重い
他の恋人がいる奴らとは全然違う
幸せだと実感できない


気がつくと溜め息をついていた






「師匠!いつまで待たせる気ですか!」

「…うん」

「全く…しょうがないから今回だけは許してあげます」

「…うん」

「師匠…?」

「…うん」

「師匠は、ゴジラの中では一番メカゴジラが好きなんですよね?」

「…うん」

「師匠は、姫ちゃんが嫌いなんですよね?」

「…うん」

「姫ちゃんのこと、好きでもないのに付き合ってたですよね?」

「…うん」

「別れましょうです」

「…うん」







気がつくと、姫ちゃんが隣にいなかった

おかしいな

屋上までぼく達はお弁当食べに行くんだったよね、確か

足を止めて後ろを振り返る

姫ちゃんがいた

「なんで立ち止まってるの?早く屋上にお弁当食べに行こうよ」

「師匠…知ってますか?」

「?」

「お弁当は、大好きなひとと食べるのが一番美味しいです」

「…?」

「姫ちゃんは、師匠なんて大嫌いになりました。だから一緒になんて食べてあげないです」

「…姫ちゃん泣いてるの?」

「師匠の目に、姫ちゃんは映って無いんですよ、自分で分かってないですか」
「なに、言って」

「聞いてなかったですか?姫ちゃんは師匠とお昼一緒に食べません!どうです、こんな性格悪い女なんて嫌いになったでしょう!もう、塩時なんです」

最後の最後で漢字変換ミス――――!!

なんて呆気にとられている内に姫ちゃんは走り去ってしまった









購買、行くか










中学3年生、初めて彼女に振られた瞬間だった














***
つづく





はい、04は書きたいことありすぎてうざったくなりそーなので一旦ここで切らせて頂きます
まだ続くのかよ!
狙って書きましたけどいーたんの性格がとてつもなく悪い
いや悪い所じゃないよ
これじゃあ只の残忍だよ!

続きからはようやく●と●が絡んだ展開に入ります
ふー、先が思いやられるぜ



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