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花青く空赤く血潮は朱く夢想には蒼きを与えんと


其処には、ぼくの目の前には、鏡が
弐枚の鏡が在った

至極当然どちらにもぼくが映っていた
然し、依然として嗚咽が止まぬ

指で触れると指紋が着いて、汚く成った
汚れた
此んなにも脆い
屹度、ぼくがほんの気紛れで此の指の角度をずらしてでも見ろ、細くえげつ無い、露骨な疵が残るだろう
決して消える事は無い

ぼくの存在は確実に映し取られていた
其の事実が、ぼくの根幹を、ゆゆぎなく揺れ動かして居た

嗚呼、どちらを割り壊したとしてももう元には戻れ無いのだ

残るのは、恍惚?








***





ぼくは苦しくなんか無いけれど
呼吸なんて、どうでも良いけれど
パリンと音が鳴りましたから、拝、どうでしょう
ぼくは赦されるのでしょうか
抑、ぼくは赦されたいのでしょうか
違う
ぼくは、


「愛して居ます」
(愛して居ます)

「………、」

「一番に、愛して居ます」
(一番に、愛して居ます)

「どちらをだ」

「何方らも、愛して居ます」

だって、どちらも貴方で在る事には変わり無いのですから
其れとも、自分の中の自分にさえ、区別が必要だとでも謂うのか

「御前は、卑怯者だ、事実、同じで違う存在等一緒には存在し得てはいけねえんだよ」

「其んな事は有りません」

「何故だ」

「何方も」

「何方も」

「元は同じ魂だからです」

「偽善者が」

「……」

「抜かすんじゃねえよ、其んな戯言、誰が認めるものか」

「そも、ぼくは戯言遣いでしょうに」

「はん、傑作な御伽噺の語り手の間違いじゃねえのか」

「そうかも知れません、でも、そうでは無いかも知れません」

其処で彼は小さく舌打ちをし、身を引いた
「御前を見て居ると酷く胸糞悪く成る」

「姶そうですか」

「俺は御前等只の所有物としか思ってねえぜ」

「はい」

「俺は御前が此の見世の花形故手放したく無いだけなのさ」

「はい」

「誰が、汚れた御前等愛すものか」


彼の其の言葉は、すう、とぼくの中に染み込んだ
嗚呼、ぼくは此の言葉こそを、
  待ち焦がれて居たのだ






***




穢らしい其れを啣え珊瑚色を纏わせようか
吐き気がする
何を言って居るのだ、真に穢らわしいのはこのぼくであると言うのに




「いーたん」

「はい」

「俺と、逃げてくれないか」

「…………」

「俺と、何処迄も行こう、俺はいーたんと行きたい」

「零崎様」

其れは、其れは、酷く魅力的て
酷く心狂う様な誘いだった

「お願いだ」

「………、」

嗚呼、もう駄目だ、と思った
もう、壊れて仕舞う

「いーたん」

「解りました。一緒に行きましょう」


駆け落ちの時間は、午前参時
ぼくは、行






あきゅろす。
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