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花青く空赤く血潮は朱く夢想には蒼きを与えんと

花魁ぱろ
…なんだこれ
乙げー風注意
零崎が2人出て来ます



















「御指名です」

「…嗟、直ぐ行くよ。何処で?」

「拾参号室に御座います」

「云、解った。下がって」

す、と人の気配が消えた感覚

浅緑色の裲襠を軽く羽織り、扇子を胸元に差し込んだ


拾参号室に向かうべく歩いて居ると、向こうから最も会いたく無い奴が歩いて来るのが見えた

「……よお、いーたんじゃねえか」

「…………零崎さん」

「ふぅん……何、此から仕事か」

「……はい」

「ま、精々励めよ」

「………」

此の状況に耐えきれ無く成って顔を隠す様に俯いた途端、

「……なあ」

不意に腕を掴まれ、引き寄せられ、反対の手で顎を上げられる
耳元迄唇を寄せ囁かれ、肩がびくりと跳ねた

「又失敗して来いよ。たっぷり可愛がってやんよ」

「…や、痛い……です。放して下さい」

「かは、連れねえなぁ」

「……」

顎に添えられた指を払い、逃げる様にその場を去ろうとするが、容易く腕を引き戻される

「………っ、」

「なあ、いーたん?雇い主様に其の態度は無いよなあ?」

「………っや、止めて下さ」

ぱしん

「………ぃ、痛」

「終わったら来いよ。お仕置きだ」




……最近に成って、零崎さんがぼくに矢鱈と構う様に成った
ぼくがあんまりにも下手糞で構いたく成るのだろう
実際ぼくはへまばかりしている
だから、失敗をする度にああやって呼び出される
それは、仕方の無い事なのだろうと思う

そう言う事も在って、ぼくはあの人の事を避けて居る
其れも近頃は危うく在るが
何故ならぼくは雇い主、零崎人識に片思いをして居るからだ







***



仕事を終えた解放感から、ふ、と息を吐く

大丈夫、今日は仕事で其れ程目立った失敗はしていない

乱れた着物を整え、扉の前に立った

「井伊です」

と声を掛けると、暫くしてから扉が開いた

「もっと寄れよ、いーたん。御前は少し外せ」

「は」

零崎さんが声を掛けると、御付きの人が出て行った

此で、二人切りと言う訳だ
自然と喉が鳴った

「なあ、いーたん?」

「…はい」

「何か言う事が在るんじゃねえの?」

「…昼間、は、生意気な事をして、すみませんでし、た」

「誤り方がまだ温いんだけど」

にやにや笑いの彼の顔が間近に迫り、心臓の鼓動が早まる


「え…と」

「何時もの、な。上手く出来たら許してやんよ」


「……、解りました」

誘われる儘近付きながら、想った

貴方が、大好きです












***



数日後、ぼくは信じ難い状況と邂逅した


零崎人識に瓜二つの容姿、声を持っており、更には同姓同名の客が、ぼくの前に現れたので在る





「今日も来て下さったんですか」

「かはは、良いじゃねぇか。俺はいーたんがだーいすきなんだからよ」


目を細め微笑んだ彼を直視出来なかった
彼からは一度だって掛けて貰った事の無い甘い言葉
優しい笑顔

ぼくの中で、嬉しい様で居て悲しい様な、そんなものがぐるぐる渦巻いた

「冗談が御上手ですね」

そうやってはぐらかすのも、もう何度目か解ら無い

最早其れは常套句と化して居た

「冗談じゃあ無いんだけどな」

「では戯言ですか?」

「ったく、ほら、こっち来い」

「?」

近付くと、軽い口付けをされた

「好きだよ、いーたん」

「……止、めて下さい」

ぼくが好きなのは、意地悪で、強引で、笑った顔が最高に格好良い、「いーたん」

「……い、やだ…っ」

「いーたん、其んな奴の事なんか、俺が忘れさせてやる」

「ぜ……、」

ろ、崎様


ぼくの心が揺らいだ











***




「いーたん?」


後ろから両腕を回され、抱き締められた

「……なあ、御前、あの零崎に惚れたって?」

くくく、と笑う声

「…惚れてません」

「ふうん?」

「…ぼくは花魁ですから。御客様に惚れるなんて事が在ってはいけないでしょう」

「…其れは御前の意見じゃねえだろう」

「…」

「俺は御前の心に聞いてんだ」

「…其んなの、解りませんよ」

「答えろよ」

強い口調の彼に驚く

続いて強く引き寄せられた

苦しい

きゅう、と首が締まって行く感覚

「は…離して下さい」

何とか絞り出せた震える声で言う

「答えるまで離さねえ」

分から無い解ら無い判ら無い

ぼくには――――
「嫌い……では、無いです」

応えた瞬間視界が給拾度反転して、声に成らない悲鳴が零れた

体が彼方此方痛い

首に手を掛けられ焦燥する

「―――――っ」

息が、出来、無…………


ふ、と一瞬焦点が合った瞳には、彼の顔が鮮明に映し出された
其の顔は、まるで


まるで、






「…ぜ、ざき、さま…、」



殆ど悲鳴に近い声に、ふ、と指の力が緩まった




あきゅろす。
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