いざ!
皐月の樹麓さま6200きりりく *零僕零
「…よぉ、俺は考える訳だ」
「あっそ」
「…くくっ、」
「…なんだよ」
「相変わらずなのな」
「君の方こそ」
大学から帰ってきてみると、人間失格、もとい零崎人識がお出迎え、なんて最悪
……とか、考えているのだろうか
自然とくつくつ笑っていた
「……さいてい」
「ああ、お前もな」
「なんでお前は寝る場所が無いといつもいつもぼくの家に来るんだよ」
「お前が寂しいんじゃないかと思ってよぉ」
「寂しいのはお前の財布だろ」
「かはは、違いねえ」
「どっかの誰かさん解体すりゃホテル代位楽勝だろうが」
でもなー、今日はなんとなく解体する気分じゃ無かったんだよな
「気分屋なんだよ。俺は」
ふ、と体から力を抜いてそのまま畳に体を横たえる
暫くぼーっと天井を見ていたら、不意に部屋の空気が揺れる気配がした
「…君に聞きたいことがある」
「おう、なんでもお安い御用だ」
上半身を持ち上げて、体を向ける
「……こんな奴どう思う?二人して電車に乗ろうとするんだけど、一人は後ろを気にしてないからさ、自分が電車に乗った時点でドアが閉まることに全く気付かないんだ」
「ほぉほぉ」
「………結果、一人はホームに取り残され、一人は時速120、30粁の電車の中」
「………」
「何か言ってよ」
「……この場合はよ、どっちが悪いんだろうな。てかどっちに視点を置けば良いんだっつーの」
「………はぁ、」
「なんだよ」
「君に戯言は通じないことをすっかり忘れてた自分を責めている。そんなことも分からないのか?鏡の癖して、呆れる」
「溜息一つにそこまでの意味を汲み取らなきゃいけねえのかよ」
「その通りだワトソン君」
「…で?結局お前は何が言いたいんだよ」
「ぼくはこう思う訳だ。二人共悪くない、ってね」
「ふぅん、なら俺はこう考えるな。二人共悪い」
「噛み合わないね」
「噛み合わねぇな」
コイツが言わんとしていることは、なんとなくだが理解した
ははーん
あれだな、きっと
本当は寂しい癖に強がっちまって
「俺ならこう考えるな」
言ったのは、先程言ったばかりの言葉
「……」
「先に電車に乗っちまった奴はよぉ、気にしていなかった訳じゃなくて、本当は意図的に相手を拒絶してんだよ」
「……」
「でさ、ホームに残された奴はドアが閉まったあと急いでタクシーひっつかまえて次の駅に先回りするんだぜ」
「なのに君はどっちも悪くないなんて言うんだ?」
自嘲気味な表情
まるで様になってない
「ああ」
歪んだ顔
折角綺麗なカオしてんのに、勿体ねえな、ぽつりと考えた
「だってよお、二人共結局の所は相思相愛なんだから」
「……そんな設定、いつ付け加えたんだよ」
「二人が出逢う前から。ついでに出逢ってから今までも、これから延々先もだ」
「……意味が分からないよ」
「そ」
「うん」
そこで俺は、哀れで惨めな欠陥製品の手を引き抱き締めた
両腕できつく寄せると体と体がみし、と音を立てる
それでも直空虚を見つめ、停滞しか知らない、変わることを何より恐れている欠陥製品を、俺はどうしたら良い?
どうすれば良い?
「俺も、お前も、悪くないよ」
そう囁くしか俺には出来ない
背中にぎこちなく回された手にどうしようもなく堪らなくなって、俺は睫毛を震わせた
end.
お粗末様でした!
つっきー、6200踏み&報告ありがとうございます
零僕零文とのりくでしたが、ちゃんとなってますか……ね……
零僕零文は本当久し振りに書いたもので苦闘しましたが、とてもやりがいがあって楽しかったです
内容設定的には愛を素直に受け入れられないいーたんと、そんないーたんを優しく包み込む零崎でした
こんな駄文ですが、宜しければつっきーに捧げます!
お持ち帰りはつっきーのみ許可ですよ
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