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いざ!
みすまるさま5000ふりりく *零僕

「よっすいーたん。今日も激可愛いな、愛してんぜ★」

「出てけ。ていうかなんでお前がここにいるんだ」

「まあまあ。あ、水あるけど飲む?全くこの家には何も無くってほんと困っちまうぜ」


うわうざ


「帰れ」

ここはぼくの家だ
あたかも自分の家の様な顔で水を勧めるな

「えー?」

拗ねた顔でこっち見んな

「…ていうかなんで今日そんなにテンション高いの。ついて行けないんだけど」

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた!流石俺のいーたん(照)!なんと今日は俺の誕生日だ!」

「ふーん」

「反応薄!酷いよいーたん!人識は傷付いた!」

「ぇ………と、誕生日がどうかしたの」


「ん」


「…なんだこの手は」

受け皿のように重ねて突き出された両手を一瞥しながらいうと、また拗ねたような顔をされた

「…だからなに」

「いーたんから俺に誕生日プレゼントは「無い」

「即答かよ!」

「当然だろ」

大体君の誕生日なんて知らなかったし

「じゃあ祝ってくんねーの?」

「祝う手段を知らないからね」

零崎はにかり、笑って

「じゃあ俺が手段を与えてやんよ」


しまった、嵌められたそう思った時にはもう遅かった

「………」

無言でドアににじり寄るぼくに、零崎がとどめを刺す

「俺のこと、祝ってくれるんだよな?」

「………勿論だろ」

「二言はねえな?」

「あるなんて言っても君には関係ないんだろ」

「かはは、違いねぇ。じゃ、単刀直入に言う。今日1日デートしろ」

「そんなんで良いのか?」

てっきり無茶苦茶言われると思っていたので、ぼくは少し拍子抜けした

「おう、じゃあ早く行こうぜ。間に合わねえから」

「なにに間に合わないって?」

「それは後のお楽しみ!」


「?」












「で?どこ行きたいの」

「ケーキバイキング!」

「…………うぇ」

「ん?なんか言ったか?」

「…なんでもない」

よりによってケーキバイキングかよ

どんだけ甘党なんだ

「勿論いーたんも参加だからな」

「……決定事項なのか」

「おうよ」

「、………はぁ」


「っと、いーたん、ここの角を右に曲がるぞ」

それからしばらく歩いて、ようやく足が止まった

「ん」

零崎が指差した店は明らかに食べ物を扱うようには見えない



……………えっと、

「零崎正直に言えよ、ここはどこからどう見ても洋服屋さんだよな?」

「そういえばそうだな」

「ケーキバイキングはどうなった」

「もちケーキバイキングにも行くぜ?これはその下準備って所だ」


………


早くも悪い予感しかしない


零崎は、ぼくが固まっている内に颯爽と自動ドアをくぐり抜け、色とりどりの洋服の元へ向かって行ってしまった

ぼくはひとつ溜息をついて、彼を追うことにした











「ふむ…………」

「………………………………」

「あ、店員さんちょっとこっち来てくれる?こっちとこっちどっちが似合うと思う?」

「私としてはこちらがお似合いかと……」

店員さんの顔が見事に引きつっている

それと同じ位にぼくの顔も引きつっていることだろう


「な、いーたんはどっちが良い?」

「………」

零崎は途端に満面の笑みになって、そーかそーか両方着たいってか、いーたんってば欲張りさん♪とか言っている

ぼくは最早何も言えずにただそこに突っ立っていた

そんなぼく(どう見ても男)に年頃の女の子が着る服をあてがい顎に手を当てて悩んでいる素振りの零崎




店員さん、通報しないでくれてありがとう




「このスカート少し丈短けぇな…………まあいいか」

「よくない」

「あ?足は見せるもんなんだろ?妹が言ってたぜ」

「妹さんは女の子じゃん。野郎の足なんか誰も見たくないって」

「俺が見たい。ほらさっさと更衣室に入る」


カシャ、カシャ


更衣室を囲うようについている布を豪快に左右に開き、零崎が僕を手招きした

「…………はあ」

もう何も言うまい

「服、これの中から好きなの選んで着て」

「ん」

布をぴっちりと引いて閉じ、押し付けられた服の塊を一枚一枚にほぐしていく



うっわ……


センス悪





上下組み合わせる系の服は止めとこう
切実にそう思った




「………ん」




しかし、ワンピースならセンスの悪くなりようがない筈だ


ゴソゴソと漁ると、案の定それは見つかった

両手でぴん、と広げて見る


少女漫画にでも出てきそうな白いワンピース


あいつにしては良い趣味だ


ふりふりのレースを無視すればの話だが



「……ふぅ」




カシャ

「…ぜろざきー」

隙間から頭をちょい、と出して呼ぶと、すぐにやってきた

「何着たんだ?」

「…ワンピース」

「ほぉほぉ!」

「………」

「あの、いーたん」

「なに」

「見せろよ」

「ぃ、いやだっ」

「おい、見せろって」

呆れたような顔が見えた

尚も黙っていると、

「はあ………ほんっと、手が掛かる」

突然強い力で引かれ、掴んでいた布は虚しくも拳からすり抜けた


「わっ!やめ、…………ぅうう」


「照れることないぜいーたん。すっげー可愛い」


「……嬉しくないよ」

「あ、店員さん、これ、このワンピース頂戴」

「ありがとうございます」

「ちょっと待って零崎、ぼくが払うよ。君の誕生日祝いなのに君が払っちゃぼくの立場が無いだろ」

「いーの、俺が無理矢理着せてんだから」


自覚あるなら止めろよ

「あ」

「なに?」

「……っと、」

零崎はナイフをくるん、と一回転させてワンピースについていた値札をいとも容易く切断した


「………他に方法があるだろ」

「いーや?他の方法なんて俺にはわかんないぜ。あ、そうだ靴……あとは鞄も必要だな」




実のところ、零崎が値札をナイフで切断したのはぼくが値段を見ようとしたからだ
きっと気配で感じ取られたのだろう

ほんとにこういう時だけは変に鼻が利く奴だ


値札はみれなかったものの、結構なお金がかかっているのは確かなことなので、ちょっぴり罪悪感が生まれるのは無理がないと思う



「零崎、」

「なんだ?」

「…………………ありがと」

聞こえるか聞こえないかの細い声で呟いた筈なのに、それでも敏感に感じ取った君は、途端に頬を染めてぼくの頭をくしゃりと撫でた


「おうよ!」



―――そんな君が愛しいなんて

そんなことを考えるぼくは、どうにも傑作な頭に仕上がってしまっているらしい




「あ、もうそろそろ出ようぜ」

「うん」




零崎に自然に繋がれた右手が熱い、とか

人混みを避けて選んでくれてる道のり、とか


そういった細かい心遣いに気付く度、君がますます―――――




「今度こそここだぜ」

「うん」

「いらっしゃいませ」

入ってみると意外と上品な店で驚いた

「2名で予約してた零崎だけど」

「はい、お待ちしておりました。奥の席へどうぞ」

「かはは、サンキュ」

「零崎、ぼくテーブルマナーとか分かんないぞ」

「ああ、大丈夫。個室取ってあるから」

「!!!」

「なになに、そんなに真っ赤になっちゃってー」

「ぅ、五月蝿いっ!」

「お客様?」

「あ、今行きます!ほら、いーたん行くぞ」

妖艶に微笑んだ君に手を引かれ、ぼく達は店の奥へと歩を進めた






「……………」

「ん?どうしたいーたん、食べねえの?」

「……食べるよ」

……どこがケーキバイキングなんだよ

全然違うじゃん

フルコースじゃん!

予約までしてたんじゃん!

「わざわざ女装してもらったのはよ、この個室がカップル限定だからなんだな」

「……そういう訳ね」


「……っていうのは嘘で、それを口実にすればいーたん許してくれるかなー、なんてな。女装姿見たかったのも可愛いって言ったのも本心だぜ」

「君って馬鹿だね」

それぼくにばらしちゃ駄目じゃん

「生憎と俺は自分の脳味噌の具合は把握してるつもりだけどな」

「じゃあ君は自分の脳味噌を過大評価し過ぎなんだね」

「かはっ、かもな。あ、ほら外。見てみろよ。夕日がすっげーぜ」


「ほんとだ、凄くきれ…………んぅっ」




「ご馳走さま」


不意打ちのキス

軽く触れるようなそれでも、ぼくの耳を羞恥に染まらせるには十分過ぎた


零崎がぺろり、唇を舐めるその姿がなんだか見ていられなくて、思わず目を逸らした


「ちょっと動くなよ」

「……?」


零崎は自分の席を立ちぼくの後ろまで回って来て、ぼくの首に何かをかけた


「ネックレス?」

手に取って聞いてみる

「そ、気に入ったか?」

「うん」

「良かった!」

胸元には透明な石がついた首飾りが光っていた

…………?

透明?

まさか

一気に血の気が引いた

「おい、零崎これまさか「ああ、ガラス細工だからきにすんな」

「嘘吐き」

「嘘吐き?それはお前の方だろ?いいから素直にもらっとけよ」

「……なんで君がぼくに至れり尽くせりなんだよ。これじゃあまるで立場が逆じゃないか」

問いただすと、零崎は腕時計を一別し、にっこり笑ってこう言った



「うん、俺いーたんに嘘吐いた」



………やっぱり


なんかおかしいと思ってたんだ

ここはどうみてもケーキバイキングをするような店には見えない

大方レストランだと遠慮すると思ってのことだろう






コンコン

「失礼します」

と、個室のドアが叩かれた

「入っていいぜ」


カチャ、と控え目な音を立てて開かれたドアから入ってきたものを見て、ぼくは思わず息を呑んだ


可動式のテーブルに並べられたケーキの数々


そして、その中でも一際目立つ背の高い幾段にも重ねられた純白のケーキの上には、チョコレートの文字で『HAPPY BIRTHDAY いーたん』の文字


「……うそ、」

「な?俺、嘘吐いた。ごめんな」

「今日ってもしかして」

「そ、今日はいーたんの誕生日でしたー!イッツ・ア・サプラーイズ!!
いーたん、誕生日おめでとう」


「………君、やっぱり世界一の馬鹿だよ」

「世界一は余計だっつーの」

「嘘ってこっちのことだったんだ、てっきりぼくはバイキングの方だとばかり」

「馬鹿とかいーたんも人のこと言えないんじゃあねえの?」

「かもね」

くす、と思わず笑みが零れた

途端に口元を抑え顔を背ける零崎に、一矢報いた気になる

ぼくだけドキドキしてるなんて許さない

君にも同じ位ドキドキしてもらわないと




白いワンピースを翻し、腕を絡めるように抱きついた














end.





5000hitふりりくで女装いーちゃんと零崎が京都で一日デートする文でした
え?ぶっちゃけ京都な設定総無視じゃね?とか思われてる方が大半かと………
支離滅裂な文失礼しました;;
書き直し希望ありましたら遠慮無くお願いします
みすまるさま、素敵なりくえすとありがとうございました!
お持ち帰りはみすまるさまのみ許可です!

きっと零崎はお金をばいとで何ヶ月もかけてこつこつ貯めてたんだと思います
自分の意匠なんて二の次で、どうしたらいーたんを幸せに出来るかしか考えてないんです!←希望





おまけ



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