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第二の人生


東の夜

東方の国も今や夜。
日中、燦然と陽光をたたえた白壁の城も、現在は松明の灯りが心もとなく照らしているのみだった。

城の一角に追いやられたような薄汚れた小部屋。
油灯の淡い光が漏れる。


「お疲れね」
「お疲れさ…」

物に埋もれた室内に、かろうじて空けられた椅子。
痩身の召喚師が長い体を折り、俯き座してした。

ぼさついた髪が目元に垂れ僅かに覗く頬は憔悴に影を落としている。
その眼前に、覗き込むように小型の夢魔が浮かぶ。
その表情は召喚師に比べ明朗。

「聞いたわよ。もうあっちにオツカイさせてんでしょ、あのオーサマ」

頷きのみで返す青年に、夢魔は声を上げて笑った。

「ははっ!オーサマに何言われたのよアンタ、泣きそーじゃない!だっさ!」
「…っロード!ばか!」
「ホラホラ、おめめが涙と一緒に零れちゃいそーよ」
「だって……」

夢魔の挑発に思わず顔を上げたせいで涙が筋を作る。
仕方ないナア、と夢魔は微笑んでそのしずくを、小さな手で拭った。
不満に口を尖らせた召喚師が不明瞭に発声。


「王様、怖いこと言うんだ…」
「怖いこと?」
「今回の使者…つっかえされたら、次は俺に」

外に一迅の突風、締め切られた室内がガタガタと揺れた。
青年が口が何事か紡ぎ、夢魔の両眼が驚愕に見開かれる。
室内灯が映し出す夢魔の影が不自然に大きく膨張した。


「ね…。怖すぎ…やだ…無理…」
「………やるのあたしじゃん!トーヘンボク!」

艶やかな巻き毛をかき乱し、夢魔は天井を仰いだ。
つい先程までの余裕は露ほども感じられない焦燥と怒りの混じる表情で。



「あのバカ王、いつか取り殺してやるわ!」


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あきゅろす。
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