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何気ない話しをしながらの食事を終え、各々の時間となった。ボルサリーノは読書、サカズキは短刀の手入れをはじめ、日が落ちると共に床に就いた。
夏場、電灯はあまり使用しない。暗黙のルールとなっていた。秋冬期にはどうしても使用が欠かせない為、節約のために日の長い夏場は使用を控えているのだ。
とはいえ、ボルサリーノの読書が長引きルールが破られることも度々あるのだが。

「おやすみィ〜」
「おう」

ボルサリーノは布団に、サカズキは床にそのまま横になった。
布団は一枚しかないのだ。その日狩りに行った者が優先で使い、その後は交互に使う。
薄っぺらい布団は1日の疲れを取ってくれる様な物ではなかったが、この小屋にとっては唯一の生活感を感じさせる物であった。それほどまでにこの小屋は小汚い。初めてみた者からすれば、ただの廃屋だろう。
昔土砂でもあったのか、小屋の半分は潰れ、なんとか建っているのが不思議な状態だ。調理器具も、穴の空いた土鍋のみ。とても人が住む所とは思えないが、2人にとっては十分であった。もともと家を求めている訳ではないのだ。戻るべき家があるというのは、心強くはあるが、反面弱みにもなる。食事をし、睡眠をとる場所。その程度にしか考えてはいない。…はずであったのだ。


「ねェ〜、起きてるかいサカズキィ〜」
「……なんじゃ」
「こっちに来なよォ〜。一緒に寝ようよォ〜」
「断る」
「えぇ〜?」

ボルサリーノは元々の性格からして構いたがりであり、自分より小さい子には特に構いたがった。3つ年下のサカズキも、どんなに強く眼光が鋭くとも、ボルサリーノにとっては甘やかす存在でしかないのだ。
一方サカズキは他人に干渉されることを嫌い、特に子ども扱いされることを誰よりも嫌っていた。

「いいじゃない一緒に寝るくらい〜」
「ワシを子ども扱いするなと何度言うたら分かるんじゃ!…って来るな!」

ズルズルと薄っぺらい布団を引きずり、サカズキの横にぺったりと付けた。


「いいじゃない、冬は一緒に寝てんでしょうが〜」
「う、うるさい!」

そう、初めの頃は同じ屋根の下で寝ることさえ嫌ったサカズキだったが、ボルサリーノの性格にほだされら冬は2人で1つの布団を使う程になっていたのだ。

それでもサカズキがボルサリーノを拒む理由と言うのが、早い話が恋煩いだ。
最も本人ですら気付いていないほどのものであったが。

「床は堅いでしょォ〜?ねェサカズキィ〜、わっしの隣で寝るのがそんなに嫌なのかい?」
「べっ、べつにそんなこと言うちょらんじゃろうが!…仕方ないのォ、さっさとそっちにつめんかい」
「りょォ〜かい」

好きな子にそんな風にお願いされたらどうしようもなく、ボルサリーノの横に寝転んだ。
わざわざ端っこに寝たと言うのに、ボルサリーノが真ん中に引っ張ってサカズキに抱きついた。

「ボッ、ボルサリーノッ!!!」
「おやすみィ〜」

ボルサリーノはスキンシップが多く、サカズキが一緒に寝ることを拒む理由の1つでもある。

(ね、眠れんじゃろうが!)

バクバクとうるさい心臓がボルサリーノに聞こえないように手で胸を押さえるが、耳元で聞こえるボルサリーノの寝息に動悸が治まる赴きは全くなかった。





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