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XX':30分
XX":1時間
2018-10-25(木)
02'-一緒のお買い物(前編)

題材:参加者間で共有できている作品
テーマ:ショッピングモール
キーワード:「ネックレス、くつした、『またね』」のうちから一個以上

「私、こういう大きなお店初めてだよ!」
そういってエルちゃんはその綺麗な赤い瞳をさらに輝かせてはしゃいでおります。とても可愛らしい光景ではありますが、本日は休日という事もあって大変込み合っており、そのままはしゃがせてしまうと小さなエルちゃんはあっという間に人並みに飲み込まれ、迷子センターという名の島に漂着しかねませんわ。軽く手招きをするとぴょこぴょことこちらへ戻ってきます。素直でとても良いのですが、私以外にはついていかないでくださいな? と伝えると、可愛らしく頬を膨らませて「私そこまで子供じゃないもんっ」と拗ねて見せます。本気で怒っていないというのは声色と、ちらちらこちらを伺う様子で分かっているのですけれど、大事なお姫様にはやはり笑顔で居て欲しいもので。
「失礼いたしましたわ、私の可愛いお姫様」
手を取って跪き、その手の甲に謝罪代わりのキスをしました。

期限を直したエルちゃんと手を繋ぎ、ショッピングモールを歩いておりますと、色とりどりの服が飾られたショーケースや上品な陶器の棚、何に使うのかよくわからないへんてこな形のおもちゃなどと初めて見る沢山の物にあっちだこっちだと視線を引っ張られます。そのたびにあれはなんだ、これはどうだとか言いあったり、知ってるものについての知識を教えあったりなんかして、休む暇なんてとてもないくらいのリア充っぷりを体験しておりました。今まで一人でここを訪れていた時には、必要なものを買うだけなのにただただうるさくて、物が多くて、疲れるだけの施設だとばかり思っていたのですが、今では周りで笑顔をまき散らして歩いているリア充どもの気持ちが良く分かります。ウィンドウショッピングというのは、こんなにも楽しいものだったのですわね!

そのうち一つのお店に目を付けたエルちゃんが欲しいものがあるから見たいと腕を引きました。そのお店は全体的にもこもこした可愛らしい服が置いてあるお店で、きっと自分だけでは一生入ることがないようなところでした。
「そろそろ寒くなるでしょう?」
確かにこれだけもこもこしていれば温かいですし、見た目の可愛らしさも相まって心まで凍えから守っていただけそうです。まぁ、自分で着るとなると少々抵抗はありますが。なんて考えていると私の考えを見透かしていたのか居ないのか、エルちゃんが一つ提案をしてくださいました。
「何かお揃いで買わない?」
世にいうペアルックというものにはとても憧れますが、それにしたって似合う似合わないの分別はすべきです。私には残念ながらここに置いてあるようなものは似合いません。そう伝えましたが、今日のお姫様はなんだか意志が固いみたいで。普段なら「サラちゃんがそういうなら、別なのしようか」と言ってくれそうなことだというのに引いてくれません。
「ほら、靴下なんかはそんなに目立たないし、足元がもこもこなら身体もあったかくなりやすいんだよ」
そういって手に持っているのは可愛らしいポンポンの付いた靴下。成程確かに暖かそうですわね!でも、どうせならと、一つの欲張りをつい口にしてしまいました。

「これは悪くないのですけれど、どうせお揃いなら皆に見えるようなものが良いですわ」

それを聞いたエルちゃんは目を輝かせます。ここに来た時よりもっと増しているのはその笑顔も増しているからでしょうか。
「じゃあ、ここでお揃いの物はやめておこうか。他のところでも探そう」
そういってその手の靴下を戻そうとしますが、私は反射的にその腕を取りました。いえ、そのですね?それはそれとして、その靴下も欲しいなって思いまして。なんて言っている私は、きっと今頃耳の先まで真っ赤にして俯いているでしょう。そしてきっと私のお姫様は、とっても嬉しそうな笑顔になっていることでしょうね。

あとがき:
30分でこれだけかければ上等でしょうこれ!という確かな手ごたえを感じた作品でした。
後々アルピエル作品集に後編を公開します。
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