SS 2008-07-05(土) ずるい 「でさー、先輩ったらアタシの頭撫でてくれてさぁ…」 由衣さんは、もう1時間も前から『先輩』の話をしている。 少しお酒が入っているせいか、舌があまり回っていない。 由衣さんは『先輩』が好きで、私は由衣さんが好き。 由衣さんの話によると、『先輩』にも好きな人がいるらしい。 私→由衣さん→『先輩』→? という、片想いの図。 「先輩ったらさ、好きな人いるくせにアタシの頭撫でちゃってさ、ずるいよね…」 「そうですね‥」 「だって、先輩…アタシが先輩のこと好きって知っててそんなことするんだよ…!‥ずるいよ、思わせ振りだよ」 本当に切なそうな顔をする由衣さんを見ていると、私の恋は叶わない気がする。 でも、 「一番ずるいのは、由衣さんですよ‥」 1時間前から私の手をずっと握っている由衣さんも、十分ずるくて、思わせ振りです。 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ただひとつ違うのは、私の想いが由衣さんに伝わっていないということだけ。 [*最近][過去#] [戻る] |