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Ba TAICHIな出来事
2007-04-16(月)
「MOON PALACE」よりPaul Auster

僕は電話で葬式の手はずを整え、伯父さんの友人に何人か連絡を取って(ハウィー・ダン、鼻をへし折られたサキソフォニスト、かつての教え子数人)、一応ドラにも連絡を試み(見つからなかった)、それから棺と一緒にシカゴへ帰った。ビクター伯父さんは僕の母親の隣に埋葬された。我らの友が土のなかに消えていくのを見守る僕たちの頭に、空が雨のつぶてを投げつけた。それが済むと、みんなでノースサイドにあるダンの家に行った。ダンの奥さんがささやかな食事を用意してくれていた。それまで四時間というもの、ずっとめそめそ泣いていた僕は、ダンの家に着くやいなやコールドカットの肉や熱いスープと一緒にバーボンのダブルを立てつづけに五、六杯流し込んだ。それで気分も相当よくなって、一時間かそこら経ったころには大声で歌い出していた。ハウィーがピアノで伴奏してくれた。しばらくのあいだ、故人をしのぶ集いは騒々しい宴に変貌した。ところがそのうちに、僕が床にゲロを吐いて、盛り上がった気分もいっぺんに白けてしまった。六時になると僕は暇を告げて、千鳥足で雨の街に出ていった。二時間か三時間のあいだ闇雲に街を歩き回って、どこかの家の玄関口でまたゲロを吐いたあと、ネオン街で傘をさして立っている娼婦に出会った。グレーの瞳をした痩せっぽちの、アグネスというその娼婦にくっついて僕はエルドラド・ホテルの一室に入り、彼女を相手にサー・ウォルター・ローリーの詩についてしばし講釈し、服を脱いで脚を開いた彼女に子守り歌を歌ってやった。あんた頭がどうかしちゃってるわね、と彼女は言ったが、僕が百ドル渡すと、朝まで一緒にいてあげるわと言ってくれた。でも僕はよく眠れなかった。午前四時にベッドを抜け出し、濡れた服に体を押し込んで、タクシーを拾って空港に行った。十時にはニューヨークに戻っていた。
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