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2017-10-29(日)
『セッ…しないと出られない部屋』

 お久しぶりです。一応生きています、ビスです。

 なんか最早懐かしい感があるお題ですが、一回も書いていない事に気付いて、ちょっと書いて見ました。

 カプは『リトライ』の八束と蜜です。はちみつコンビですので、色気は皆無です。R指定もございません。
 残念過ぎるうえに、割りと中途半端ですがご容赦を。

 お時間と心にゆとりのある方のみ、暇つぶしに読んでみて下さい。



『セッ(規制)しないと出られない部屋に閉じ込められました』


 こんなん、本当に起こるもんなんだなー。
 堅く閉じられたドアの上、電光掲示板に表示された『24時間以内にセッ●スしないと出られません』という短い文を眺めながら、オレは現実逃避気味にそんな事を思った。

 暇を持て余した金持ちの道楽に付き合わされているのか、それとも未知の力によるものなのか。
気付けばオレは、無機質な部屋に閉じ込められていた。

十畳程度の部屋には、やたらとデカいベッド以外には、殆ど家具はない。ベッドの横にある小さなテーブルの上には、ボックスティッシュとローションとコンドーム、小さな丸い器に入っているのは、おそらく軟膏。
はよせいと言わんばかりの露骨さには、辟易する。見える場所に監視カメラ的なものがないのが、せめてもの救いか。

 ぐるりと見渡すが、窓どころか壁の継ぎ目すら見つけられない。換気口すらないのは、ちょっと怖いな。24時間以内って命の期限も含んでたりする?
 今のところ息苦しさはないが、24時間後は分からない。
 どこの悪趣味な人間の仕業かは知らないが、さっさと済ました方が得策か。

 それにしても……。

 オレは、ちらりと隣へと視線を向ける。
 オレが思考を巡らせたり、部屋の中を探っている間もずっと、電光掲示板を凝視したまま固まっていた隣の男は、今もまだフリーズしたままだった。

 どんだけ衝撃がでかかったんだろう。
 こんな狂った状況に巻き込まれたんだから無理はない、という気持ちと同じくらい、呆れてしまう。

「八束」

「……うおっ!?」

 顔を覗き込み、声をかける。
 すると漸く彼は反応を示した。ビクリと肩を跳ねさせ、一歩後退る。ちょっと驚きすぎではないだろうか。もしかしてコイツ、結構ビビリ?

「み、みみみ、……みつ」

「はいはーい。君の相方、蜜君ですよー」

 真っ赤な顔で盛大に吃る八束に、オレは呆れ顔で溜息を吐き出した。
 こいつほど残念なイケメンという言葉が似合う男は、中々いなかろう。耳まで赤い八束に、いつもの威厳や風格は微塵もない。ただ変な可愛らしさがあるあたり、美形というのはなにをしても様になるもんだな。

「どんだけ動揺してんだよ」

「す、するだろ、そりゃ!」

「まぁ、そうだな」

 こんなおかしな状況に巻き込まれて、動揺一つしない人間はいないだろう。そう思い同意を示すが、八束はおかしな事を言い出した。

「オレとお前が、その、せっ……ゲホッ、とか」

「そこかよ」

 思わず、まんまな突っ込みが口をついて出た。
 どこに拘ってんだよコイツ。しかもセクロスが照れて言えなかったぞ。中学生か。

 冷めた目を向けると、八束は恥ずかしそうに視線を逸らした。

「……平然としているお前がおかしいんだよ。このままだとお前、オレに……んだぞ」

 首の後ろを掻きながら、ボソボソなにか言っているが良く聞こえない。絶対、重要な事ではないのでスルーする。お前の羞恥とか葛藤とか、今は知った事か。

「取り敢えず、八束。どうする?」

「え、」

「ドアは開かないし、壁も結構頑丈そうだな」

 コン、と指の背で壁を叩きながら八束を見る。

「換気口もないし、脱出出来そうな場所はない。かなり癪だが、命令に従うのが一番の近道だと思うんだけど、お前はどう思う?」

 真っ直ぐに目を見つめると、八束は唇を引き結ぶ。
 オレを真剣な目で見下ろす八束の喉が、ゴクリと鳴った。

「……そう、だな」

 目を逸らし呟く八束は、妙に色っぽい。伏せた睫毛が影を落とす瞳が、こちらを窺うように見る様や、微かに寄せられた眉が男の色気を纏う。世慣れぬ少女が見たのなら、一発でノックアウトされそうだ。
 しかし哀しいかな。この部屋にいるのは八束と、そして彼の美貌には慣れきってしまったオレのみ。即ち使い所はない。

「よっしゃ。じゃあ、さっさと済ませよう。ケツ出して、八束」

「………………は?」

「ケツを捧げよ」

「アウトだろソレ!! 最低なパクリだぞソレ!」

「大丈夫、たぶん使い古されて見向きもされない。いいからケツ出せ」

「嫌だ!! 断固拒否する!!」

 両手同士をつかみ合い、正面から押し合うオレ達。
 なにをやっているんだと聞かれたら、オス同士のマウントの取り合いですと答えたい。

「なんでオレとお前で、オレが女役なんだよ、おかしいだろ!? オレのが身長何センチでかいと思ってやがる!!」

「体格的にはそうでも、お前のが顔は良いだろ! 大丈夫、イケる!」

「ふざけんな! つかお前、オレ相手に……勃つのかよっ!?」

 何故そこで吃る。そして赤くなる。
 八束の言動及び行動が不可解過ぎるが、オレは問われた事について考えた。八束を組み敷いて、勃つか?
 涙目でオレを見上げる八束や、シナをつくる八束のアレソレを想像してみた。

「………………、おえ…………頑張ればいけんだろ」

「テメエ、嘔吐いてんじゃねかーよ!!」

 涙目で八束はキレた。やだ、この子情緒不安定?

「しょうがねえだろ。お前だって、オレのあんな姿やこんな姿を想像してみろよ。絶対吐くから」

「吐くかよアホが」

「なに強がってんの」

 八束は何故か、苛立たしげに舌打ちをする。さっきまでの情けない様子は消え失せ、機嫌の悪い肉食獣のように、小さく唸った。
 押し合っていた手が、すいと引かれる。支えをなくしたオレの体はバランスを崩し、八束の胸板に顔がぶつかった。
 
「お前はなにも分かってない」

 なにが、と聞き返す前に、なんでか体が宙に浮いた。抱え上げられたオレは、勢いよくベッドに投げられる。大して痛くはないが、衝撃は割りと大きかった。

「なに、」

 なにをするんだと抗議をしようとした。でも出来なかった。
振り返ったオレが見たのは、まさにベッドに乗り上げようとしている八束。彼の顔つきはまさに、飢えた獅子そのものだった。伸びてきた手が、オレの頬を包む。ヒュと息を呑むオレを見て、八束はうっそりと笑んだ。

「だから、分からせてやる」

 オレはどうやら、押してはいけないスイッチを押してしまったらしい。
 そう理解したが、後の祭りというやつだった。


END

「『セッ…しないと出られない部屋』」へのコメント

By nyante
2017-10-31 03:05
お久しぶりです。更新ありがとうございます!

みっちゃっんたら!想像してみろとか!そりゃ襲われるはバカー!と大喜びでした。
本編の今後の展開も、ずっと楽しみにしております。
pc
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By いちごもち
2017-11-01 23:53
わ〜アップありがとうございます〜♪
はちみつコンビ可愛すぎる!
みつ…美味しく頂かれましたね、ふふふ

お身体大事にしてくださいね!
また更新楽しみにしております
pc
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By ちよこ
2017-11-06 20:34
幸せ…ほんと幸せ…生き返る…ありがとうございます!!!
pc
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By 白鷺
2017-11-07 00:50
蜜ちゃん〜www口は災いの元〜
本編も好きですがこういうネタも好きです。ご馳走さまです(о´∀`о)ノ
pc
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By おおもり
2017-11-12 20:34
意外と冷静な蜜くんに対して、意識しまくりな八束が可愛いです!最高でした!!
pc
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By かふぇおれ
2017-11-30 04:01
ふざけ合って終わるかと思えば…
最高でしたごちそうさまです!!
pc
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By sora
2017-12-05 21:01
うは〜スイッチ押しちゃった
無自覚な蜜ちゃん可愛いすぎる!
せ、先生、続きくわしく…(笑)
短編お疲れさまでしたv
pc
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