2012-11-06(火)
重要なお知らせ(嘘)

長らく更新停止をしてきた当サイトですが、
このたび閉鎖することを決定いたしました
今まで、ご愛顧いただきありがとうございました

この夏から管理人の私生活が忙しくなり、小説を書く時間がなくなってしまったことが閉鎖の理由です
決して、ハルアベに燃え尽きたわけではなく、今でもハルアベ大好きです!








うそです。

こんにちは
生きてます
拍手コメありがとうございます

ほんとに…
こんな開店休業サイトに…、ハルアベ界の肥溜めサイトに…
わざわざ文章を考えて、指を動かしていただいて…
泣けました
ありがとうございます

サイトはまだやめません
私の嫌がらせはまだまだ続きます
肥溜めはうぜーので埋め立てました

というわけで、嫌がらせ!


着地点が見当たらないハルアベ



「タカヤ!」

日の落ちたグラウンドに響き渡ったその声に阿部は振り返った。
グラウンドと公道を分けるフェンスに張り付き、ガシャガシャと音を鳴らす人影があった。既視感のある光景だ。
「呼んでるぞ」と花井に肩を押されるより早く阿部は影の元へと走る。一般人より縦も横も大きい恵まれたシルエットの持ち主を阿部は一人しか知らない。

「ちわす。元希さん」

カクンと下げられた頭に榛名は気を良くする。大変素直でよろしい。
しかし次に顔を上げた阿部の眉間には深い皺が刻まれていた。

「うっせぇよ。近所迷惑だろうが」

西浦高校は住宅地のなかにある。

「テメー、相変わらずナマイキな」

グシャグシャと榛名は阿部の髪をかき混ぜる。見た目より柔らかい髪の毛の感触が手のひらに気持ちいい。
「尊敬できる人には俺だってそれなりの態度とりますよ」
「ほー。タカヤにソンケーする奴なんかいんのかよ」
「いますよ!」

まず父親。次にモモカンの顔が浮かぶ。

「あとは……、三橋と花井ですね」

尊敬する人間を聞かれ、同級生の名前を挙げられる少年はなかなかいない。しかし阿部は恥ずかしげもなく指を折る。

「ミハシ?」
「西浦のピッチャー。もう何度目ですか」
「……ハナイは」
「うちのキャプテンです」

人間とは怠惰な生き物だ。人類の進歩はラクをしたいというぐうたらな精神が支えたといっても過言でないだろう。
そんななかで花井のあの貧乏くじ引きっぷりは尊ぶべき稀有な存在だと阿部は一目置いている。

「へぇぇぇぇ……」

そんな理由とは露知らず榛名は声を低くする。
ミハシはいい。どっかのたれ目と違って俺のことソンケーしてるし、どこをどう比べたって俺がアレに負けてるとこなんて無いし、だからだろうけど、なんとなく憎めない奴だから。
でも、ハナイ?誰だそれ。俺だって主将なんですけど。ついでにエースで四番なんですけど!

「どれ?」
「禿げてる奴。デカイ方」

西浦は私服校であるうえ、先輩がいないので、阿部のぞんざいな説明でも榛名は容易に『花井』を特定することができた。
榛名は両手を前に出し、花井に向ける。

「何してるんですか」
「呪いかけてる」

うにゃうにゃ唸りながら榛名は答える。
共鳴するように頭の天辺のアホ毛がゆらゆらと揺れている。

「なんて?」
「毛根死ね」

榛名の目はマジである。

「あはははは!」

突如、倒れるように体を折り曲げた阿部は最寄り駅まで響き渡るような大声で笑い出した。近所迷惑どころではない。
警報のような突然の大声に西浦の部員はもちろん、榛名も驚いて肩を震わせた。

「そんなんしなくても……、もう死んでますよ……!あははは……」

コイツこんな笑う奴だったっけ、と思う榛名を尻目に、「阿部のツボってホントよくわかんないよね〜」とアホな犬のようにへらへらと寄ってきた茶髪が阿部の手を握った。
未だ肩を震わせる阿部はされるがまま水谷に引きずられていく。

「あっ!待て、テメェ!」
「くっ……!ははは。……あと着替えるだけなんで、大人しく待っててください……!」

笑いを噛み殺す阿部は榛名ステイを命じる。
ガシャン、とフェンスを鳴らし榛名は奥歯を噛み締めた。
榛名にとっては阿部の笑い顔、ましてや爆笑なんてオオサンショウウオ級に珍しいものであるというのに、慣れているのか大して動じた様子のない水谷の姿に榛名は頭の中を通る血管が破裂寸前まで膨らむのがわかった。
榛名が高校に入って変わったように、阿部も変わった。
我慢を覚え、解り合うことの難しさと尊さを知り、そして花井の禿げネタがツボになった。花井が月一で美容院に通っているという事実を知ったとき、阿部は笑った。腹筋が破れるのではないかというほど笑った。
俺の知らないタカヤ。
それを当たり前に見せるタカヤ。それを当たり前に享受する西浦のヤツら。

「言い忘れたことある!ちよっとこい!」

吠えるように言う榛名に阿部は広角を引き上げたままため息をつくと、水谷の手をほどき再度榛名の元へ駆け寄った。

「なんすか?」
「お前って、笑ってっときですら眉間にシワ寄ってんだな」

フン、と榛名は鼻を鳴らし阿部の眉間を力一杯つついた。
撃たれたように後ろへ逸れた阿部の頭を榛名はグローブと手のあいだでボールを弄ぶように掴むと、自身の口許へと引き寄せた。

「……っ!」

ピチャという湿った音が両目蓋の中央辺りで鳴るのを阿部は聞いた。
深く刻まれた皺を伸ばすように生ぬるい舌が阿部の眉間を這っていた。

「なっ!に、すんだ、テメーは!」
「タカヤがそんな顔してんのがワリーんだろぉ?」

あかんべと悪辣に舌を出して榛名は言う。

「誰のせいだと思ってんだ!」
「俺ではねーな」
「お前だろ!」

いや違うだろ、と榛名は思う。
満面の笑みにすら名残を残す皺が誰のせいかと問われれば、それは他ならぬ阿部のせいだ。

「アンタのせいです」

しかし阿部は断定的に言う。基本的に阿部はこの世の不幸の九十パーセントは榛名のせいだと思っている。

「俺のせい?」
「ああ」

証明するように阿部の眉間はより深く谷を作る。
某リンゴの電話ファイブの地図がアホなのもマグロの漁獲量が減ったのも俺が三橋にビビられるのも全部お前のせいだ。

「そうか。俺のせいか……」

榛名は息をするのも忘れ、ジト目でこちらを見つめる阿部の顔を眺めた。
やがて呆けたように空に目線を移すと、ため息をつくように呟いた。
だとしたら、嬉しい。
眉間の皺のように、榛名も阿部のなかに刻み付けられているのなら。


阿部は花井を尊敬していることを書きたかったんです
ハゲネタはどうでもいいんです


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