[携帯モード] [URL送信]
心の臓に触れた棘
2010-11-28(日)
キスが甘い物だと誰が決めた


浦原とのキスはいつだって苦い珈琲の味と煙草の味がして不味い。だから一護はチョコレートを常に持ち歩くことを決めた。


「………常に?毎日?学生鞄にチョコレート?」
「お前のキス、苦いから嫌だ」

あっはっは!浦原は暫しの沈黙の後、腹を抱えて笑い出した。
緑の作業着に黒の羽織、お馴染みのへんてこ帽子と下駄。学校帰り、前を歩いていた変質者憮然とした格好を見て思わずその背中に蹴りを食らわせてやった事を未だ根に持っているに違いない。浦原喜助の心は結構狭い。

「苦いんだったらしなければ良い」

一護の眉間に皺が寄る。殊更良く響いた声色でそう言われたので面白くない。お前、今本気で言ってるだろう?
さして物分りが良い方では無い一護が拳を握り、浦原の頭上に振り上げても男は微動だにしない。ただただ帽子から見え隠れする瞳だけが悪戯に笑っていて一護を凝視している。食えない男。それが浦原喜助。

「したいからしてんだよ」
「嫌々じゃなく?」
「誰が嫌っつったよ。苦いって言っただけだろーが」
「それじゃあ我慢してよ。アタシ甘いキスなんて嫌」

いかにもキスって感じで気持ち悪いでしょう?
いけしゃあしゃあと言ってのける男の頭上目掛けて力いっぱい拳を振り下ろした。ガツン。予期していた痛みが拳から心臓部位へと伝わって痛い。畜生、いてえ。

「…満足?」
「なわけねーだろう!」
「じゃあ仲直りのキス、しましょ?」

なんでそうなるんだ。一護は叫ぼうとしたが男の方が一枚も二枚も上手で、罵倒せんとする口を塞がれて舌を侵入させられた。ああ、やっぱり男とのキスは苦くて不味くて、それでもどこかに甘さが見え隠れてしていたのだからしてやられた。































苦いのに甘いだなんて反則だ


[*最近][過去#]







[戻る]

無料HPエムペ!