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心の臓に触れた棘
2010-11-08(月)
さあ、キスをしてあげましょう


キスしてあげるから。くち、開いて?
命令系かよ。そう思ったけれど、目の前から発せられるフェロモンには勝てず、一護は無言のまま、おずおずと口を開く。
舌を舐めて、絡めて、噛んで、吸ってあげますね。
そう耳元で囁かれたから腰が砕けてしまいそうで、けれど両足に力を入れて踏ん張る。ここで負けてなるものか、と思うけれど、結局流されて事に及ぶのは目に見えている。だって今、一護は素直に口を開いてその熱を持つ舌先を迎え入れているのだから。

「ん、…ぅあ…っ、ふむ、ん、んん、んぁ…」

ちゅ、ぢゅむ、ぢゅ、生々しい水音が触れ合った唇から聞こえ始める。唇同士の性行為。その言葉が浮かぶ程、とてもじゃないけれど、生々しい。
嚥下しきれなかった唾液が口端から溢れ、顎を伝って鎖骨に触れる。離れた唇を目で追ったら、自分の唇と浦原の唇を伝うようにして銀色の糸が引いているのが分って目に痛い。

「もっと?」

濡れた唇を親指で拭いながら浦原の足は一護の足の間へ差し込まれる。下肢に集まった熱を更に追い立てる様にして膝で擦られたら腰に電流が走った。

「…はっ、」
「もっとして欲しい?」

意地悪く問うのは男の十八番だ。
知っている癖に、と毎度毎度男を睨みつけるも、それが男の嗜虐心とやらと煽っているだけだと知っている。知っているが、睨まずにいられない。
ここで一護が欲しいと口走るのを待っているのである事も知っているが、節操なしと有名な男の言いなりには決してなりたくない。男も女も、喜んで下僕に成り下がる。そんな男とキスをしている。もしかしたら流れで事に及ぶかもしれないくらい、そんな熱の篭ったキスを。
それでも一護にはプライドがある。恋をしている。この最低な男に、生娘もビックリするくらいの純情な恋を、している。それが一護にとってのプライドであり、いくら焦がれた男だからとて、プライドを踏みにじる権利は無い。

「っ…!」

呼吸を貪る様なキスの合間、男の薄くて冷たい下唇を思いっきり噛んだ。
瞬時に眉間に皺を寄せた男を見て、ざまあみろと思う。

「……じゃじゃ馬」

そう言って傷ついた唇を舐めた男の瞳はにんまりと嫌味ったらしく歪んでいた。ゾクリ、と背筋が唸るのを合図に、男の手が服を破るように侵入してきた。舌なめずりをした男の欲が今だけ、自分に向いていると言う事実がこうも熱を上げて仕方が無い。



























恋と言う言葉が不釣合いな程の熱情


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