2016-04-05(火)
めぐる〜の没オチ(未描写部分あり)
紹介された病院に勤めだして一か月が経つ。
健太郎の元職場だというその病院は、奇しくも――いや、意図的だったのか、そこはヒロが入院していた病院だった。
俺の配属された病棟は南4階。脳外科と整形外科の混合病棟だ。
今まで人との交流を意識的に避けていたことから心配していた人間関係も、就職してみればなんということもない。
女性社会といわれるそこは、こと男性にとってはそう居心地の悪いものではなかった。
よく菓子を分け与えてくれる年配の女性たちはいつだってにこやかに話しかけてくれる。
ただ不満があるとしたら、こうして働いていても、やはり重要なことは何一つ出来ないということだ。
看護師が触る点滴を、注射器を、自分も扱うことができたなら。
看護師を、目指すのもいいかもしれない。
もしかしたら健太郎はこれを狙っていたのかもしれない。「計画通り」と笑う健太郎を想像し笑みがこぼれた。
慢性硬膜下血腫を起こした優さんの世話が入院していた
これで償える?
優さんはしゃべらない。しゃべれない?
拒否もされない。
ただニコニコ笑っている。
「優さん、俺、真面目に働いてますよ」
「今を大事に生きてるつもりですよ」
「ずっと『大事に生きる』ってことが分からなかったんだ。今だってよく分からない」
「だから優さんに聞きたかったんだ。これで間違えてないですかって」
「優さんは俺の顔なんて見たくなかっただろうけど」
だから聞きたくても、一生会うつもりなんかなかった。
「せっかく会えたのに、もうその答えを聞くことはできないんだな……」
いつの間にこんなことになっていたんだろう。
俺が定職にもつかずフラフラしていた間に?
もし俺があのまま進学して立派な職に就いていたら、こうなる前の優さんに堂々と会うことができてた?
今となっては何もかもが今更でしかない。
「なぁ、優さん。俺間違ってないですよね?」
「齋藤に見せても恥ずかしくない人生を生きれてますよね?」
「なぁ…何とか言ってくれよ……」
優さんはただニコニコ笑っている。
暗く静かな病室の中、俺の嗚咽だけが響いていた。
最初はこのオチで考えてました
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