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スパナ観察記録。
2010-06-15(火)
一時間限定デート(白蘭)

「報告は以上です」
「うん、ご苦労様。」

白蘭さんに任務報告と近況を伝えたところでお昼の時間。

でも今は「今日は何食べよう」なんて思える状況ではない。

…だってボスだけあって白蘭さんの前だと緊張するんだもん。

最初(私が面接受けた時)は普通の人だと思ったんだけど
入隊後はそれが大きな間違いだということに気付いた。

流石トップに立つ人だけはある存在感。
思わず警戒したくなるのだ、彼の前にいると。

あーはやくスパナとお茶飲んでのほほんとしたい。(※やること沢山あるんだけどそこはひとまず置いといてね)


「ではこれで失礼します」
「あちょっと待って」

「はい!(なに!?)」

思わず背筋をぴんと伸ばすと固くならないでーとか言われてしまう。

……無理です。


「もうお昼だから一緒にランチしない?」
「え…」
「そんなに嫌そうにしなくてもいいじゃない」
「ちっ違います、驚いただけで…す」

なんで私みたいな作業着一丁の(しかもかなり汚れてる)女を
食事に誘うんだろう?

行きたいですか!?


の「え…」だったわけですが

「えっと(スパナ一人でも平気かな…?)二人でですか?」
「何か不都合ある?」

「そういうわけじゃないんですけど…
スパナ上司に許可を頂いてからでも?」

「うん、彼氏に許可貰っておいで♪」
「!…しっ失礼します!」

そそくさと逃げるように退室した。

知ってたんだーーー!
上司に知られてるだなんて恥ずかしい!






「スパナ、お昼なんだけど」
「ん?どうした」

気を取り直して白蘭さんと食事することになったと説明する。
てっきりウチも行く、と言うかと思っていると

「ああ、いってらっしゃい」
だって。

「妬かないの?」
「妬いて欲しいのか?」

「…ちょっとは?」
疑問系で返すと彼は笑って

「白蘭はお前のタイプじゃないから大丈夫だ。」
「なるほどって私のタイプ知ってるんですか?」

「なんとなく。だが向こうが手をだしてくるかもしれない。やっぱり行こう」
「どっちなんですか!?」

「…と言いたいが仕事が溜まってる」
「確かに…」
「二人で行って来たらいい。ただし一時間限定だ。」
「!了解です」

私としても緊張しっぱなしはつらいからね。





というわけで白蘭さんと食事に行くことに。


「あれ?着替えてきたんだ」
「はい。…あの格好では流石に飲食店に入りにくいかと思いまして」

そこらで工事してる方々よりよっぽど汚れてたからね、あはは…

「へえ。可愛いじゃない」
「えっあ、ありがとうございます」

にっこり微笑まれて思わず照れてしまう。
っていつもの笑みと変わらない気もするけどさ…

あまり褒められることってないからね、つい。


「さって、じゃあどこ行こっか」
「私は何でも…あ、朝はパンとコーヒーでした」

「どうして朝ごはん情報?」
「朝が何かでお昼の気分も違いません?
で、お昼はしっかり食べたい気分なんですけど…」

つまりお米ね。あ、でも白蘭さんって細いから…私より食べなさそう。

私一人でぱくぱく食べてたら恥ずかしいかも。


「ふふっいいよー。だったら…あ、お寿司屋さんがある」
「!本当ですねーくるくる寿司だ」

全品105円!が売りの回転寿司の店を発見。

「あそこでもいい?」
「!はい、お寿司大好きです!」

「やっと笑ったー」
「えっそうです、か?」
「さっきから難しい顔してたよ?」

ああ、それは私が女の子らしくないのが全ての元凶です。
決して白蘭さんのせいでは…


「気をつけます!」
「あははっいいよ、君らしい方がみてて楽しいし」
「えっ」

人としてそれはどうなの?(面白がられるって…)







「白蘭さんは魚平気なんですか?
外国の人って駄目な人多いって聞きますけど」

回る寿司を手にしてる彼をじっと見ながら訊ねた。
(だって食事風景が想像できないんだもん)

「うん、平気だよー生より焼いた方が美味しいと思ってるけど」
「へえ。」

「スパナは?」
「えっ」
「食べてる?お寿司とか」
「…はい。結構ぱくぱくと」

「そうなんだ。好みとか合うのかな?君と」
「いや…甘いものが好きという点は合いますけど
食の好みは結構ばらばらですね。」

「ふーんそっか。仕事の方は順調?」
「それはまあ…でもものすごーく今忙しいです」
「だよね、今大変な時期なんだ。」

「そうなんですか?」
「うん。詳しいことはいえないけどね」

やっぱりこの半端ない仕事量は
近々戦争か何かが起こるからなんだろうか?

普段ちらりと胸をよぎる不安が顔に出てしまったようで
「ごめんね、でも心配しなくていいよ。…絶対に負けたりしないから」

と真剣な顔で彼に言われてしまった。

…絶対に負けない?
白蘭さんが何をしようとしているのか私にはわからないけれど

「はい、信じてます。あ、でも無理しないで下さいね」

とだけ答えておいた。

スパナの上司で私たちボスだ。信じてついていってもいいと思う。

「ありがとう♪もういいの?」
「え?」
「お寿司」
「あっ頂きます!」




話しているうちに緊張も解けてきて
ご飯の後も結構な時間白蘭さんと喋ってた。

仕事の話がないと彼は本当に普通の人みたいだ。
今時のお兄ちゃんって感じ?


「…そうだ!」
「ん?」
「ちょっと待ってて貰えますか?」

時間ももうすぐなので基地に戻っていたところ
丁度お菓子屋さんをみつけた私。

手早く目当てのものを買って紙袋を手に戻る。


「スパナにお土産かな?」
「はい。あと…これを」

紙袋から一ビン、マシュマロ入りのものを取り出して彼に渡す。


「食事のお礼、にもなりませんけど…どうぞ」
「わあ嬉しいな。ありがとう♪」

彼は快く受け取ってくれた。うーん、やっぱり仕事抜きだといい人だ。







「では私はこれで」
「うん、今日はとっても楽しかったよ」
「こちらこそご馳走になってしまってすみません」


「いえいえ。今度は回らないお寿司に行こっか」
「あははっ機会があればぜひ」
「うん、またねー」


こうして一時間限定お昼休みは終わった。
うーん、終わってみれば結構楽しかったよね。

「ただいま」
「…お帰り……」
「死んでる!?」

倒れてる男を発見してしまった私は第一発見者?!
なんて事件風に思いながらスパナを起こす。

「どうしたの?」
「ご飯食べたい」
「食べてなかったの?」
「ああ…アンタが作るご飯が食べたくて待ってた」

それはまあ嬉しいような…手がかかるような……


「一時間の約束」
「え?」

「2分オーバー」
「う、すみません。お土産あるから、ね?」
「…仕方ないな」

大人しく座布団の上に座った彼を見て
当分白蘭さんとの食事はないなぁと笑いながら思った。

有意義だったし楽しかったけどね。それは秘密ってことで。



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機械工学だけじゃなくて、ウチのこともみなよ。(byスパナ)
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