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堤観察記。(更新停滞気味)
2009-03-29(日)
ぬけがけアイス


「俺次風呂いってくるな?」

「わかった、お兄ちゃん入ってる間にご飯並べとくね」

「頼む」




…兄が来て5日が経過していたけれど彼は帰る素振りをみせない。




……そうなってくると…郁に会いたくなってくる。


郁が来る→お兄ちゃんが追い払う→追い払われて帰るか、たまに
反抗して私と会う→兄がいるのでいちゃいちゃすることもできず帰る


という流れになっているからなのです。


…まあ郁からのアプローチはちょくちょくある、けど私が駄目。

だって身内の前でキスとかできないよね?!





(さてと、これで準備完了。先に食べてようk)


「!?!!?!?!」


ふと窓を見た私はぎょっとした。



窓に不審者が張り付いている!?!




「…あ」


違う、よくみたら私の彼氏でした。






「…どうしたの?」
「しっ」


玄関を開けると指を立てる郁の姿。首にはカメラもかかっていた。


「アンタの兄さんは?」
「今お風呂です」


「…チャンスだね」
「え??」


「ちょっと来て!」

「なっ、うわ!」


腕を引っ張られご近所用のサンダルを履いて表へ。

何事かと顔を見るとイタズラが成功した子供みたいに笑う彼がいた。


なんだか、楽しいことが待ってる気がする。











「気がしただけか〜〜」


いつものお気に入りの場所に腰を下ろした郁さん。
私も習って隣に座る。



どこに行くのかと思ってたら郁は近くのスーパーでアイス一本だけ買うと


いつも写真を撮ったり絵を描いてる私達お気に入りの
大きな大木のあるところに走ってきたというわけ。





「ぬけがけだよ」

「うん?」


「お兄さんからぬけがけしてやった。…今だけアンタを独り占めできる」

「なっ!」


この人凄く恥ずかしいこと臆面もなく言い放った!!!!



「…照れてる」
「照れてませんっ」

「これで冷やせば?」
「つめたっ!!」

アイスを頬に押し当てられて上下する肩。
確かにひんやりするけと冷たい。


「ははっ」


私の反応に郁が声をあげて喜ぶ……この満面の笑み、なかなか貴重ですな。


「パシャリ、郁さん、今の顔よかったですよ〜
げへへ。もう一枚お願いします」


「変態カメラマン、辞めてくれない?」

「あははっ……綺麗な夕陽だねぇ」

「うん、あアイス」



外はソーダ味で中にバニラアイスの入った棒つきアイスを
取り出した彼はぱきっと半分に割った。


半分こね。

そういって一本を私にくれる。



「懐かしいアイスだ!!わーい」

遠慮なく頂戴してさっそく一口食べると冷たくて甘い。

そして懐かしい味がした。



「美味しい」
「嬉しい」

「そんなにアイス食べれて嬉しいのかな郁は」

「違うよ。久々に…こうして2人でゆっくりできて嬉しい」

「……あらまあ」


思わずも緩む頬は幸せの証に他ならない。



「お兄さんが近くにいるとキスもしてくれないし?」

「!ごほっ!!い、郁ってばいつの間にそんな大胆な子に」

「別に普通だと思うけど」


そ、そうなの?思春期の男の子って。




「キス」

「へっ!?」



「する?しない?」

「し、しないよ!?」


「………」
「…ぅ、……前言を撤回します」

「宜しい」




ちゅっ



夕陽が沈み始めた頃に2人の唇は重なった。


…当たり前だけど?ソーダ味でした。

………青春??






(ただいま〜)(おうお帰り)

(ただいま、お兄さん)(おうお帰帰れ!!)





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あんたが笑うなら、俺も笑ってあげる。…それが俺の幸せだから。(by郁依)
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