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小話
2012-07-12(木)
*恋の矛先-14

「…子供?」

「あぁ、九州にいたときにな。言ってなかったけど…」

「う、嘘ですよね?」

「…孝太が寂しがるからもう帰ってくれるか」

「宍戸さん嘘ですよね?宍戸さんは奥さんがいたら他の人となんか寝たりしない人です!」

「大きい声でなに言ってんだよ。迷惑だ帰ってくれ」

「宍戸さん!」

会話中一回も視線を合わすことなく長太郎を無視して孝太が待つ部屋へと素早く入った。
ドア越しに宍戸さん、と長太郎が苦し気に吐き出した名前が胸にぐさりと突き刺さり、気付けば目から滴がぽろぽろと落ちてくる。
自分の意思に関係なく流れ落ちる涙を下から孝太が見上げてきた。
心配掛けさせてはダメだと思いつつもこの涙を止める術が思い付かない。
仕舞いにはドアを背にずるずると座り込んでしまった。

「だいじょうぶー?どこかいたい?」

「ん…ゴメンな」

孝太が俺の頭を優しく撫でてくれてるのがわかる。
俺は俯きながら堪えきれずに吐き出した。

「長太郎…好きだ…」

本人に言えたらどんなにいいか。
これで幸せが保証されたら迷わず飛び込むのに。
長太郎と好き合い一緒に歩んでいくことが必ずしも幸せとイコールになることはないと自分に言い聞かせた。

長太郎、早く俺のことを忘れてくれ。




続く



















幸せにしてあげたい。
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