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日記やネタ倉庫 思い付いた物を書くので、続かない可能性大。
2013-05-27(月)
妬み陰険吸血鬼主人公が学園行くネタ番外

あの日あの時、もし俺がお前の言葉を受け入れていたら、一体どうなっていたのだろうか?最近その事を考える。

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満月に近い上弦の月が照らす、職員用の修練所。そこに二つの影が向かい合っていた。二人とも長身の男性だ。

片方は細身の男性。まだ若い彼は肩まである長髪をひっつめて一つに括り、残り毛をピンで留めている。身にまとうは濃紺の袴と単衣だ。彼の周りには、砂を擦りあわせるような音をたてて黒い靄(もや)が浮かんでいる。

彼が靄を利用しながら徒手空拳で攻撃しているのは、体格の良い青年。角刈りに近い短髪で、ジャージを着ている彼は向かってくる細身の男性、公彦を軽くいなしている。

靄を纏う拳を振るう公彦は汗だくなのに、吉正は汗一つかいていない。余裕を持って避けると、指導をしながら攻撃を各所に与えている。

「おら、動きが止まってるぞ」
「ぐっ」

公彦が殴りかかり、そこで生まれた隙に、蛇のように差し出された吉正の腕が公彦の襟首を掴み力をいれる。片手だが、軽くも小さくもない公彦の体を持ち上げて地面に叩きつける。

肺から空気が抜けて咳き込む公彦。掴まれて投げ飛ばされた拍子に上着がはだけ、殆ど脱げかかっている。安っぽい蛍光灯に照らされた薄暗い室内に、白い胸板だけでなく胸の先端や腹部も剥き出しになる。それを見た吉正は、投げ飛ばした格好のまま固まった。

そのまま無言で、苦しみもがく公彦を見つめていたが、暫く経つと、しゃがんでいた体を起こし公彦に告げた。

「今日の稽古は終わりだ」
「はい」

涙声の公彦は、手の甲で目を擦りながら立ち上がる。泣いてる訳ではなく生理的な物だ。彼を見下ろす吉正は注意点を次々に告げていく。

「お前は速さばっかりで重さがない。足元が疎かにしているせいだ。それに、攻撃する度に体を伸びきらせるのは一番厄介な癖だ。気をつけとけ」
「はい」

次々にあげられる問題点に、ショボンと落ちこむ公彦。彼は今までの模擬戦で、一度も攻撃を与えることすら出来ない状況だった。そのどれもが無様に負けている。

落ち込む公彦に、タオルが投げ付けられた。

「ほら、さっさとシャワー浴びてこい。腹も減ったし体も怠い、早く部屋に帰るぞ」

背中を見せたままの吉正のぶっきらぼうな言葉に、先ほどまで落ち込んでいた気分が浮上する。何故ならばその言葉で 、自分の料理を楽しみにしてくれると、自分が求められていると感じる事が出来るから。

「ん」

笑いながら頷いて走り出した公彦は、さっさと歩き出してしまっている吉正の横に追い付く。彼を見つめた公彦は嬉しそうに言葉を続けていく。

「吉正、部屋に着いたら、ご飯にする?お風呂にする?それとも」
「!?」
「指圧?」

ゴイン!

上記は、無言で歩いていた筈の吉正が、唐突に頭を校舎の柱にぶつけた音だ。洒落にならない金属音に、公彦はムンクの叫びのようになって驚愕する。

「よよよよ吉正!?」
「気にするな」
「大丈夫!?」
「気にすんなつってんだろ」
「はいい!」

吉正の言葉を聞いていない風に騒いでいた公彦だったが、吉正に睨まれ、背筋をビシィと正して悲鳴に近い声で返事を返した。それを横目で見た吉正は、自分に対する苛立たしさに舌打ちしながら早足で立ち去った。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

たとある喫煙所で二人の男が座っていた。片方は小柄で童顔な青年、片方は顔に大きな鉤傷のある青年。童顔過ぎて煙草をくわえている事に違和感のある青年は、横に座っている青年に話し掛ける。何故か、傷のある青年は某有名ハンバーガーshopのテイクアウト用の袋を持っていた。

「最近、公ちゃんと吉ちゃんって仲良くなったよね。最初は心配だったから安心したよ」
「・・・・・・」
「組手をしてるんでしょ?戦い方を教えてあげるなんて、面倒くさがりな吉ちゃんが珍しいよね。オイラ安心したよ」
「なあ、寛ちゃん」
「なに?」
「ご飯にする?お風呂にする?それとも」
「わ・た・し?」

突然のフリだが、長年の友人生活は伊達ではない。打ち合わせ無しだが、寛はクネクネと体を揺らしながら気色悪い声でボケた。

「・・・・・・だよなぁ」
「ちょっと!その反応失礼過ぎるよ!振ったのソッチだろ!」

オカマみたいに小指を立てながら投げキッスをムッチュウと放つ寛を無言で見つめ、気のない顔で吉正は空中を見て深い溜め息を吐いた。渾身のギャグをスルーされた寛は、恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら抗議する。

だが、それは吉正の爆弾発言でうやむやになった。

「俺、もしかしたら公彦に惚れたかも」
「・・・・・・pardon?」

思わない言葉を耳にして間抜けな顔をする寛を横目に、吉正は静かに煙を吐いた。大きな煙の輪が天井に浮かんでいった。

「いやさ、最近体術を奴に教えてるだろ?」
「お・・・・・・おう」
「すると、取っ組み合いをしてるから乱れる訳だよ服が」
「おう?」
「で、半裸の奴を押し倒す訳」
「ぉぅ・・・・・・」
「それが、ムラッとなって、下半身も反応」
「おりゃぁぁぁぁ!」

殴りかかった寛を冷静に受け止める吉正。両手で寛の腕を掴み、足で動きを拘束しながら、しみじみと言葉を続ける。

「いやな?乱れた服の間から覗く肌がなんとも。あと、吸血鬼の体質か、汗かいても全然臭くないんだけどさ、汗で濡れた布がこうピッタリと・・・・・・。その後、風呂に入るんだけどさ、風呂に入った後は毎回マッサージしてくれて、公彦が俺の体を揉んだり踏んだりして、それがまぁ際どい部分を躊躇なく、こう揉んできて」
「その手の動き止めてよぉ!」

ワキワキと卑猥に手を動かす吉正に鳥肌を立てる寛。涙目で怒鳴りながら、吉正の両手を掴んで下げさせる。

「ふざけないでよ吉ちゃん!」

冗談だと判断した寛は、吉正に怒鳴る。そう、有り得ない事だ。今は大分親しくしているが、昔の公彦と吉正は犬猿の仲。仲がいいとか悪い以前の問題で、まさに天敵どうしで険悪な雰囲気を振り撒いていた。特に吉正は怒鳴ったり怒ったりせずに無反応を貫き、一番質が悪い反応だった。公彦ならまだしも、吉正がまさか。

「寛ちゃん、俺達友達だろ?」
「よ、吉ちゃん?」

怒りぎみだった寛は、先程とは一転した真剣な雰囲気に戸惑う。無表情で寛の襟首を掴む吉正はポツリと呟いた。

「公彦の情報ゲロれ」
「うわぁぁぁぁ!」

その時、吉正が浮かべていた表情を見た寛は、泣きながら逃走を計る。いくら戦闘中心ではなくとも、吉正と同じ師の下で学んだ退魔師。全力で逃げた彼を捕まえる事は出来なかった。

「チッ逃げたか」

喫煙所から逃げ出した寛を見送った吉正は、舌打ちして座り込み煙草を燻らせた。脚が不機嫌に動き、貧乏揺すりを繰り返す。スパスパと凄まじい速さで煙草を吸う吉正は、すぐに三本目を取り出した。

そんな彼に、耳障りな笑い声が聞こえた。煙草を取り出す為に下を向いていた吉正が顔を上げると、そこには兄弟子がいた。

「うーす」
「っす」

煙管を燻らせながら、ニヤニヤとしながら片手を上げる兄弟子を見た吉正は頭を軽く下げる。先程まで気配を全く感じなかったのは気にしてない。

「なあ、お前って桐生家の使用人に恋しちゃってんの?」
「なら、どうなんすか?」
「いやぁ、見る目あるなお前。桐生家の使用人は良いからな、沢山の意味で」

ニヤニヤと厭らしく笑う兄弟子の言葉に、吉正はあの事件で公彦が言っていた言葉を思い出した。

『様々な事を躾られてきましたので、どんな御奉仕もさせて頂きます。どうか私に罰を与えてください』

「それ、どういう意味っすか?」
「いだだだだだ!」

まるでライオンのように獰猛に立ち上がり、そのまま兄弟子の顔面を握る吉正。大きな彼の手は、兄弟子の顔をスッポリと覆い万力のように締め付ける。ブランとぶら下げられた兄弟子は、苦しみながらも意外と素直に答えた。

「いやさ、桐生家の使用人って主家の様々な要望に応える為に 茶道、華道、楽舞に芸術様々な事を修める訳だよ。その様々の中には色っぽい事も当然、なあ?昔一度だけ桐生家の使用人と致した事があるんだがな、そりゃあもう桃源郷だったなぁデュヘヘヘ。学園にいる使用人も、見た目は大人しいがきっと夜になったら、きっと血以外もカラカラに搾り取られるぜ?グヘヘヘヘ」

頭を絞められながらもゲスに笑える根性は素晴らしいが、自分がどんな位置にいるか分かっているのだろうか?その笑い声を聞く吉正の握力がドンドン上がっている。

「おーい?吉正君?なんだか頭がヤバイなかなって?」
「・・・・・・」
「や、止めろ!死ぬ死ぬ死ぬぅ!」
「・・・・・・」
「ぐほおぁぁぁぁ!」

ベシャリと汚物を投げ捨てる吉正。大丈夫、ただ気絶させただけだ。ピクピクしているが意外と大丈夫。痙攣している兄弟子を絶対零度の瞳で見た吉正は、煙草を灰皿に押し付けると退出した。

そんな吉正が廊下を歩いていると、とある人物に声を掛けられた。

「ちっす先生。ちょっとお話があるんですが」



「妬み陰険吸血鬼主人公が学園行くネタ番外」へのコメント

By 芋
2013-05-27 22:21
ぐへ( ̄∀ ̄)
吉正さんLOVEですねはい
T008
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By コノミ
2013-05-28 02:20
そうか…色々仕付けられてるんですね……
デュヘヘへへ
公彦めっちゃ上手いか逆にめっちゃ苦手かのどっちかだろうなww
上手いとしても、余裕なフリして実は恥ずかしくて一生懸命なのがバレバレとかww
P906i
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By 58
2013-05-28 02:54
兄弟子のキャラが地味に好きですwww

以外とすんなり自覚してびっくりしました。
吸血シーンにどう繋がるのか、次回が待ち切れません d(^_^o)

吉正少年は純粋そうなのでゲイに嫌悪感持ってそうなイメージなのですが、両刀になった訳が気になります。それとも、業界の雰囲気から自然になったのでしょうか?
pc
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