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(軍ぱろ/上司×部下)





『鬼が笑う』

「君は私を好きになる」
何だ、とエドワードは思った。静かな執務室で発せられた意味不明の言葉は上司であるロイ・マスタングからのものであった。
「は?何言ってんの」
馬鹿にしたようにロイに返す言葉は、呆れたようにも聞こえる。第一、何故このタイミングでそんなことが言えるのだろう。ロイの卓上に山積みになっている書類を眺めてエドワードは、はぁ、とため息を吐いた。昨日終わらせるはずの書類だったり、今日が締め切りの書類だったり・・・。とにかく、山積みの書類は未来を与えてくれることはなさそうだ。つまり、今日、この机の上を綺麗サッパリにしなければ、明日も今日と同じ現象が起こっているのだろう。
「何、じゃないさ。私の予言だよ」
やっぱり自分の上司はどこかおかしいのではないか、エドワードは時々思う。
「何が起きてるかも分からないのに?残念だけど、その予言は外れてる」
「どうしてだい?」
もう一度、エドワードはため息を吐いた。どうしてこの上司はこんなにも鈍感なんだろう。

「好きになる」じゃなくて、「好き」なのに。

じっとロイの目を見つめる。きょとんとしたように見つめ返すロイの目は深くて、エドワードは思わず、ぼぅとしてしまった。
「エド?」
は、と我に返る。ああ、そうだ。
「教えない」
「は?」
「だから、教えないって言ってるんだよ。教えたくないから教えない」
「上司命令」
「職権乱用」
ロイが気付くまで、教えないでおこう。その予言とやらが当たると信じている、ロイのために。

(fin.)






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