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まるで幻。



けれど現つの世界。



これは夢なんかじゃなくて。



確かな現実──。







02.リコリス






「しろがね」

ぽろりと口から零れた名前。

知盛と同じ顔、けれど何処かが違う。この気持ちは以前にも体験している。
銀に初めて会ったときも、同じように知盛ではないのかと疑っていたのを思い出した。

けれどここは現代。
銀が、いるはずもない

のに。

「銀…なの…?」

違うと頭では存在を否定しているのに、止められない。

知りたい。

一体、誰なのか。
銀ではないのか。

「…みこさま」

消え入りそうな声で紡ぐ言の葉。

彼は確かに「神子様」と言った。
聞き間違えなんかじゃないと、信じたい。

「銀」

もう一度、名を呼ぶ。
間違いであってもいい、ただ聞きたいだけ。

(貴方は本当に、)

彼は何も言わず、優しい笑みを浮かべた。

否定でも肯定でもなくはぐらかすようにも見えた。
けれどその微笑みは銀のものと寸分変わりなくて、余計に引き込まれてゆく。
深いふかい紫の瞳に写る、自身。



どれくらい見つめ合っていたのか、肩に白く染まった。
先に視線を逸らしたのは彼の方。

もう一度空を見上げ、それにつられて見上げると空からゆっくりゆっくり舞い落ちる白き花に目を奪われる。

思い出される、平泉での記憶。













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