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※スパーダ(現代パロ)




どうしようかな、と私は何度目かの寝返りを打った。
私の視線は両手で大事に大事に握った携帯のディスプレイに一点としている。
煌々とするディスプレイが示すのは、あいつの、電話番号だ。
もう何度も眺めてきたからきっと空で電話番号を言えるだろう。そして眺めてきた分だけ私は時間を無駄にしてきたのだ。
私はこの電話番号に通話ボタンを押したことは一度も、無い。
受話器のマークが上斜めに傾いて、さあ! と私を誘うけど。駄目だ。かけられない。緊張と恥ずかしさが前に立って親指が震えるのだ。
私は盛大に溜め息を吐き出して仰向けになる。ついでに携帯も放り出す。
(直接話す時は緊張しないのになあ。)
むしろど突く勢いで喋れるのに。なんたって幼なじみだし。
しかもあんな不良に元々遠慮なんてものいらないのだ。
今日だって、屋上でサボってるあいつを蹴っ飛ばして、悪口言い合いながら教室に引き摺っていってやったし、お昼時間になれば、摘まれたお弁当のタコさんウィンナーを理由に口喧嘩したし。
多分、私は誰よりも一番にあいつと接してる、くらいなのに。

昔は、電話だって普通にかけられた。
けれど、いつの間にか芽生えていた感情に気付いてしまったせいでそれは不可能になってしまったのだ。
直接話す時ときっと違うだろうあいつの声を想像するだけで頬が熱を帯びる。というか耳元であいつの声がするなんて有り得ない。恥ずかしさで死ねる気がする。なんだこれ、私は乙女か。
くそう、と小さく呻いて放り出した携帯をぎゅっと胸に抱く。
すきよ、呟いた声は今頃どこで寝てるんだか解らないあいつには届かないだろう。
でも届けばいいのに、と私は暗い紺を敷き詰めた窓に向かって携帯を掲げた。









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