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屋上の塀によじ登って見上げた空は見たこともないくらいに近くて大きくて。
私はずっと俯いて生きてきたのだと自覚した。

けれど自覚した所で、私の命はもう数分のものであり重力に従って真っ逆さまに落ちた先にあるものは真っ赤に染まった私の死体なのだからこの考えは無駄なのかもしれない。

自分はいつ発見されるだろうか。
きっとすぐには見つからないだろう。ここは屋上に登った所で誰も気付かないような死角の場所だし、そもそも私が居なくなったということに気付いてくれる人などいるのだろうか。

寂しいなどとは思わない。
そもそもそんな感情があるならば最初からこんな馬鹿げたことしないのだ。

見つからないならそれはそれでいい。
下にある木々達の養分となって、私は死んでようやく誰かの役に立てる。少し嬉しいかもしれない。

気分も大分良くなったし、そろそろ飛び降りるかな。
遺書なんて大それたもんは勿論なくて、心残りなんてもんもない。
明日もないけど、やっと自由という名の死を手に入れられるなんて考えてしまう私を中二病とかって言うんだろうけどもうどうでもよくて。

少しだけ震える足を立たせてもう一度空を見る。
恨めしいほど青い空に手が届くことなんてもうないのだろう。

足をコンクリートのギリギリにまで近付かせ息を飲む。

ばいばい、私。

目を閉じて、身体を前に倒した瞬間。おもむろに腕を引っ張られる。


「馬鹿かてめえは!」


泣き黒子のある綺麗な顔立ちの、この学園のキングである跡部景吾だった。
なんでどうして。
彼が誰かなんてどうでも良かった。
なんでここがバレたか。それが私の中で一番の問題で、混乱した。
そのまま捕まれてる腕を振り払おうと腕を振り上げるけれどどうしてか離してくれず、あろうことか抱き締められてしまった。


「間に合って、良かった…」


彼の身体が声が震えていた。
その理由も私にはわからない。
だけど、なんでか涙が出た。
彼も少し泣いていた。
彼の腕の中はとても暖かかった。




















さよなら世界
(涙が綺麗だと初めて思った)








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