焦想。
仕事を早めに終え、久々にゆっくりとした時間が流れている。
あぁ、こんな時間が苦手だ。
まだ仕事に追われている方がマシだ。
だけど仕事をすればあいつらは心配をするから、と想像して終わった仕事を端に置きそのままソファーで酒を飲むことにした。
だが、目の前のグラスは汗をかいている。
先程まで琥珀色のウイスキーをロックで煽るように数杯飲んだ。
酔いが回るのが俺は遅い。逞と飲んだ時はワインを4本目になる頃から記憶がなかった。
「酔えれば楽な所もあるんだけどな……」
静かに時が流れる。
思い出すのはいつも同じ。
変わらない風景。
上を見上げるようにして、目を伏せるように腕を置いた。
「恭子……」
会えなくなってから、もう数年が経つ。
なのに色褪せないままだ。
まるで昨日のように過ごした日々を思い出せる。
あの心地いい声も、細い体も、さらりとした黒髪も。
何一つだって忘れていない。
むしろ毎日思い出している。忘れたくもない。
あの時よりも大人になっている筈で、死ぬほどがむしゃらにやってきた。
西園寺財閥というバカでかい相手に噛みつくように会社を立ち上げ起動にもやっと乗せた。
前を必死に向いていないとすぐに壊れそうにもなる。
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