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またお暇なおりにぽちっとして頂けると喜びますw

以下御礼小話−1になります。
秋なので(笑)

* * * *

『十五夜お月様』

「はい?」
 滅多にない平日夜の来客に、秋彦は欠伸を噛み殺しつつ扉を開けて。
 次の瞬間目を丸くした。
 その様に。
「こんばんは」
 柔らかく苦笑しながら、続く声。
「侑治?」
「他の誰かに見えますか?」
 微笑と共に告げられる言葉に、秋彦はけれど続く言葉を見つけられずにいた。
「先生?」
「え?ああ、いや」
 ようやくそう声を零し、秋彦はとにかく、と室内に彼を招き入れる。
「お邪魔します」
 いつものようにそう口にしながら侑治は部屋の中へ入ると、秋彦を見上げる。
「お邪魔でしたか?」
「え?ああ、いや、そんな事はないんだけど」
「ないんだけど?」
「どうしたんだ?」
「なにがですか?」
「いや」
「……用がなきゃ来ちゃダメですか?」
 恋人の部屋に。
 小さく首を傾げながらの、悪戯っ子のような笑みを伴わせた言葉に。
 秋彦はごまかすように小さな咳ばらいを1つ。そうして。
「そう云うわけじゃない」
 ひどく真剣な声音で返された言葉に、侑治はクスクスと楽しそうに笑いながら秋彦を見遣る。
「ごめんなさい、ちょっと言ってみただけです」
 そう言って、それからローテーブルの上に広げられた−と云うよりむしろ散乱している−教科書や資料、そしてノートパソコンを見て呟く。
「ごめんなさい、邪魔しちゃってますよね」
「構わないさ。コーヒーでいいか?」
「え?ああ、いいえ、あの」
「ん?」
「オレ、しますから」
「これくらいいいさ」
「いえ、あの、そうじゃなくて」
「え?」
「あの、コレが、あるので」
「これ?」
 侑治が手にしていた紙袋に気付き、オウム返しに秋彦は声にする。
「せっかく綺麗だったから」
「綺麗?」
「ウチより此処からの方がよく見えそうだし」
「見える?」
「あの……月が」
「月?…って」
 そこまで言って、ようやく秋彦は思い至る。
「ああ……満月か」
 そう言えばそんな事−中秋の名月だとかなんだとか−をニュースで言っていた事を思い出す。
「それで?わざわざ?」
「すみません」
「いや、別に責めてるわけじゃない」
 言いながら秋彦は侑治を引き寄せ、そのまま腕の中に閉じ込める。
「せんせ」
「いいよ、茶煎れて、2人で月見と洒落込もう」
 そのかわり。
 柔らかい髪に口付けながら、囁く。
 狼男が現れないように祈ってろよ。
 その言葉に、侑治は目を丸くして。
「へーきです」
 だって現れたって優しい狼男でしょう?
 ふふふ、と。楽しそうな笑みを浮かべたまま続けられた言葉に。
 相変わらず、と秋彦は胸中で呟く。
 無意識に誘い文句を零す恋人だ、と。
「先生、照月堂のお月見団子、食べた事あります?」
 美味しいんですよ本当に、無邪気に笑んでそう告げる侑治に。
 答えの代わりに。
 秋彦はその唇を、久方ぶりに塞ぐのだった。

* * * *

相変わらず彼らは甘々でゴザイマス…f(^^;






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