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火黒



こいつは強い。
火神はそう思う。
バスケをやるには小柄どころか貧弱でどこも恵まれた体格を持ち合わせていない黒子は、強い。
速いとか高いとか上手いとかじゃなく、ただ強い。

どうして黒子は折れてしまわないのだろう。
火神は度々思う。
火神には、幸いなことにたくさんのライバルがいる。
それは黄瀬であったり緑間であったり青峰であったり氷室であったり。
彼ら好敵手がいる。
だから目標が持てる。
あいつより速く、あいつより高く、あいつより上手く。
具体的な課題を見据えてモチベーションを高めてきける。

なら、黒子は?
黒子はただ己の技術を高めて行くだけ。
ひたすら自分との戦い。
それを何年も続けているのだ。

すげぇよ、お前は。

火神は素直に黒子を賞賛する。

そうやって、ずっと一人で闘ってきたのか。

オレは、今お前と闘えているのだろうか。

「火神くん」

黒子が呼ぶ。火神は顔を上げた。

「試合始まりますよ」

何をしてるんだ、早くコートに入れ。一緒に彼らを、キセキの世代を倒すんだろう。

黒子の瞳がそう言っていた。
自分の隣に火神が立つ。それが当然だという顔をして。

全幅の信頼。

黒子からそれが伝わってきた。

火神は武者震いした。

この信頼に応えなきゃ男じゃねえだろ。

「おう、悪い」

火神はコートに入る。
拳を黒子に向けて差し出した。

「勝つぞ」
「はい」

二人の拳が合わされる。
二人の闘いが始まった。


(120604)







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