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※B/UM/P O/F CH/ICK/ENのKパロ
※綱リボ
※リボーンが乙女
※途中からKとは全くの別物

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週末の大通り、賑わっていた一角が急に静かになる。
それに気付いたものは何事かとそちらを見、顔を顰めて直ぐに目を逸らした。
闇から現れた漆黒の子供は、黄色いおしゃぶりを下げ、酷く堂々と歩いていた。
街の者全てに忌み嫌われたその子供は、呪われた子供、アルコバレーノと呼ばれる存在だったと思う。
何事か用があったのか、大通りを少し歩き、再び彼は路地裏の闇に消えようとした。
何処からか彼に向かって投げられた石が路地に転がる。
彼の額からは血が流れていた。



呪われた存在だなんて事、重々承知していた。
存在自体が迫害されるから、孤独にも慣れていた。
親からすら捨てられた身だ、孤独なのが当たり前だった。
人と関わるのは面倒臭いからこっちも好都合だった。
それなのに。
いつもの路地裏で寝ていたら声を掛けられた。

「今晩は、おチビさん。……呪われた虹の子ってお前?俺と一緒に来いよ。きっと俺らはよく似てるから」

頬に流れる血を指で拭われる。
抱き寄せられた身を起こし必死に走った。
孤独でいたいんだという声を信じて。
掛けられた声の優しさが、触れた躰の温かさが信じられなくて。
走って、走って、どれだけ走っても彼は着いて来た。

――俺が止まるまで。



結局俺は絵描きだという彼と一緒に暮らすことになった。
絵描きは“呪われた子供”でスケッチブックを埋めていく。
いつものように絵描きが黙々と俺を描いていた時。
ふと絵描きが顔を上げた。
一枚の絵を仕上げる前に彼が顔を上げるなんて珍しくて、思わず俺は首を傾げる。

「そう言えば、お前、名前は?」

俺が絵描きの家に来てから何日経つのか、初めての問い。
何故今更と思う。
生まれて直ぐに捨てられた身だ、所有者などいる筈も無い。

「俺がつけてあげようか?」

「……」

所謂読心術と言うものだろうか。
それとも勝手な決め付けか。
それでも、彼の所有物になるのもそう悪くないかもしれないと思ってしまった。
そう考えるのと同時にふわりと彼が笑うところを見ると、本当に読心術なのかもしれないと、思った。
それから彼は俺をまじまじと見つめ、言った。

「……“リボーン”、なんてどう?」

「生まれ変わる、か」

お前と会って再び生まれたなんて、そんな心地がしていた俺にはお似合いかも知れない。
照れ臭くて思わず下を向く。
その顔に堪え切れない笑みが浮かんでいるなんて、彼にはバレバレだったのだろうが。

それから彼は事ある毎に俺をリボーンと呼んでは温もりをくれた。
慣れない優しさを、それでも嬉しく感じ、ゆっくりと甘える事を覚えていった。
それなのに。
嗚呼、俺はお前を苦しませる事しか出来ないのか……?


深々と雪が降る、一際寒い日。
絵描きは血を吐いて倒れた。
何故、そう聞いても彼は苦さの混ざる笑みを浮かべるだけで。
医者に診せようと、俺は必死で走った。
“呪われた子供”と言うだけで門前払いにする医者達。
そんな中、一人だけ診てやると言った医者がいた。
その医者は、診てやるかわりに俺がこの街を去ることを交換条件として出してきた。
それでも街一番の名医だと噂の医者だ、診せれば恐らく彼は助かるのだろう。
どうすればいいか、なんて、考えなくても解ることだ。
拾ってくれた彼への恩返し。
だけど――。
温もりを知ってしまった今、独りに戻るのが恐くて。
嗚呼、俺は何時の間にこんなに弱くなってしまったんだろう。
それでも――。
彼を助ける為に、俺は彼から離れるしかない。
行く宛もなく街を出ようとしていたその時。
彼は血の出る咳をしながら俺に手紙をくれた。

「俺の故郷に残してきた人に、この手紙を届けてほしいんだ。俺の帰りを待っている筈だから。……お前もそこで待っててよ」

嗚呼、お前は。
無理に躰を動かしてまで、俺に居場所をくれるのか。
思わず涙が出た。
そっと抱き締めてくれた彼の腕の、力の弱さを感じて。
医者に頼むと頭を下げて、俺は走って街を出た。



手紙を見る度に、俺は独りではないと思えた。
それでも人の温もりが欲しくて、俺は走った。
彼を待っている人ならば、彼と同じように、呪われた子供だということを気にしないんじゃないか、そんな淡い期待を胸に抱いて。

雪の降る中、行く先々で投げ付けられる石や冷たい言葉。
温もりを知った今、傷付かないわけではない。
それでも、彼が呼んでくれた名前を思い出せば耐えられた。
彼は、優しさも温もりも全て詰め込んで呼んでくれたから。
呪われて生まれてきた俺にも意味があるとするならば、彼に会う為に生まれてきたんだろうと、今ならそう素直に思えた。



何日かかったのだろう、殆ど休憩もとらず走り続け、ついに彼の故郷に辿り着いた。
整備された綺麗な街並み、手紙に書かれた家までは後数キロというところか。
思わず止まってしまった足を叱咤し、再び走り出す。
石畳の道は走りにくく、出っ張った石に転んだ。
それと同時におしゃぶりが石畳に当たって高い音を放つ。
呪われた俺の存在に気付いたのだろう、直ぐに襲い来る罵声と暴力。
既に反抗する力も無く、身を丸め耐えながら、それでも目にだけは力を入れる。
やっと解放された頃には手足が千切れそうな感覚で。
それでも俺は手足を引き摺りなお走った。
手紙と住所を見比べながら。

見付けた、この家だ!

チャイムを鳴らすのと同時に視界が暗くなった。
出て来て慌てて駆け寄る気配。
何となく優しそうな雰囲気だと、そう感じながら俺は意識を手放した。













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