次の講義までを学食で時間を潰すのはよくある事。さらに昼間とあれば他の学生も多く、ざわざわと賑やかな空間が出来上がる。
俺もその内の一人で、学部が同じ恋次とルキアと一緒に同じテーブルで駄弁っていた。
「ここをこうするとな、こうなるんだよ」
「おお、なるほど」
説明に声を上げるルキアに、目が合った恋次と苦笑を零し合う。
最近ルキアはスマホに変えたばかりなのだが、使い方が良くわからないと恋次に泣きついたらしい。
「それルキアに扱えるのか?」
「失礼な!私だってこれくらい!」
「あー、まぁ大丈夫だろ。説明しやすくするために俺と同機種にさせたし」
「ふーん」
「恋次、これは?」
ルキアが袖を引いて質問するのに、恋次は肩を寄せて手元を覗き込んで答えている。普段じゃれ合いの様な喧嘩をよくする二人だけど、なんだかんだと仲がいい。別にいちゃつくのは構わないのだけど、ヤニ下がる恋次が面白くなくて、こっそりと携帯を構える。
カシャッ、と鳴った撮影音に二人がこちらを向いた。
「何撮ってんだよ」
「恋次のだらしない顔。ルキアいるか?」
「いらぬわ」
「いや、そこは嘘でも欲しいって言ってくれよ」
即答に対してがくりと肩を落とす恋次にルキアと二人で笑った。
後でこっそりとルキアに画像を送っておこう。携帯の画像は仲睦まじい様子の二人が写っているから。
と、そこで携帯が振動してメールの着信を伝えてきた。送信主は浦原。俺が唯一いちゃついてもいい相手。
『今日定時で帰れそう。夕飯でも食べに行きません?』
用件のみの短い誘いメールだけど、自然と口許が緩んだ。
『いちゃいちゃしたい。待ってるから家で食べようぜ』
ちょっと考えてから返した返事は、間違いなく目の前に座る二人の影響だ。羨ましい、という気持ちが小さく生まれてしまったんだから仕方ない。
直ぐに震えた携帯を開けば『どうしたの?』の一言。俺らしくないメールに驚いているのが目に浮かぶ。なんだか楽しくなってきて『そのままの意味。真っ直ぐ帰って来いよな』なんて送ってしまう。送信中、の文字が消えるのを待っていたら、カシャッという音がして顔を上げる。
ルキアがスマホをこちらに構えていた。
「何撮ってんだ」
「いや、珍しいものを見たから練習を兼ねて」
「なんだよ珍しいって。勝手に撮るなよ」
「気付いてなかったのか?」
恋次にまで言われて眉間に力が入る。一体何が言いたいんだ二人は。
「人のことは言えないって話だ」
ルキアの手からからスマホを抜き取った恋次が画面を俺に向けてきた。
「!」
そこには携帯を見つめながら眉間の皺すら緩めて笑う自分が写っていた。
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