◆吸血鬼物語その3(クラトス*連載ヒロイン)
風が大きく木の葉を揺らして、ざあああ!と音がした。
なびく髪に、月光に照らされる鳶色の瞳が輝いた。私より褐色の、力強い瞳。
彼の言葉を、もう一度頭の中でリピートさせる。
「…な、なんでそれを、知って…」
「覚えていないのか?気を失う直前に、腹が空いたと呟いただろう」
「!」
う、うそ!
全く覚えのない私は、顔に熱が上るのを感じで慌てた。に、人間にお腹が空いた、なんて、いったいどこまで私は切羽詰まってたっていうの!
挙動不審になっている私に構わず、彼は左手を見せながらさらに爆弾を投下してくれた。
「生憎と人間の血は持ち歩いていないのでな。私の血を分け与えた」
「………………………………………………えええっ!!」
たっぷり一分ほど固まって、私は顔を青褪めた。彼の左手の親指には、確かに包帯が巻かれていて、彼の述べたことは真実なんだと物語っていた。
「ちょ、分け与えたって、それって私にあなたの血を飲ませたってことっ!?」
「ほんの数滴だがな。たったあれだけの量の血でそこまで持ちなおすとは大したものだ」
感心したように言う彼に、私はさああっと血の気が引いていく。
まさか、こんなことで…決めてたのに。人間の血は飲まないって。
「……の、飲んじゃったんだ…私…」
「…どうした?嬉しくないのか?お前たち吸血鬼にとって、人間は捕食対象だろう」
「…私は、吸血鬼じゃないよ」
「?」
がっくりと項垂れる私に、人間は首を傾げて問いかける。どうして、か。
どうして、私が人間の血を吸わないんだと思う?どうして、私はひっそりと館で過ごしているんだと思う?
それは、私が。
「私は、異端児だから」
「…異端児?」
「別に私は気にしてないけど、私は人間と吸血鬼のハーフなの。だから、魔族にとっては私は異端児。本来の吸血鬼よりも勿論寿命も短いし、力も半減してる」
「……」
「…私の体の中には、人間のお母さんの血が半分流れてる。だから、私は人間の血は飲まないようにしてた…んだけどね」
今回ばかりは仕方ないよね、あなたは私を助けてくれたんだし。
そう言えば、人間の彼は一歩一歩私に近づいてきて、私のことをじっと見る。
鳶色の瞳がきれいで、思わず見入ってしまった。
「…名は?」
「え?」
「名は、なんという?」
ああ、そう言えば名前言ってなかったよね。私もあなたの名前、知りたいし。
「リア…リアっていうの」
(やはり…)
その時彼が目を細めて、何を考えてたかなんて私は知らない。
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吸血鬼ネタやっとこさ続き。
きちんと展開考えてないこちらは、どうなるのかマジ心配。
いっちょ事件でも起こしてみますか←(おま)
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