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心ばかりのお礼で申し訳ありませんが、お楽しみいただけると幸いです。




貴女は、シカマル実姉です。
恋愛要素ありません。

かなり鈍臭い鹿姉がいます。
それでも宜しければどうぞ。



―――――








私の弟、シカマルは中忍になって、女の子からプレゼントを貰う機会が増えた。
どちらかといえば年上の娘から。
それは、殆どが食べ物…お菓子やお弁当だった。

それをシカマルは、必ず家に持ち帰って、冷蔵庫に入れる。






【手作りお菓子】






16歳になったシカマルも、度々プレゼントを貰っている。
正確には、年を増す毎に貰う回数も増えている。
やっぱり、お菓子やお弁当がその多くを占めていて。
相変わらず、それを持ち帰っては冷蔵庫に入れる。

シカマルは、手作りのそれを殆ど口にしない。

だったら受け取らなきゃいいじゃない、なんて事は聞かない。
どうせ「断るのがめんどくせぇ」とかそんなとこでしょう。
大体、受け取る時も「ども」くらいだし(それで何でプレゼントをくれる女の子が減らないのかってとこがまた謎なんだけど。)



「ねぇシカマルってさ。バレンタインでも貰ったチョコ食べなかったよね?」

「あ?」

「もし彼女が出来て、バレンタインにチョコ作ってくれたらどうするの?」

「あー…半分…三分の一は…多分…」



半分弱はどうにか口をつける、らしい。
小さくなる声に、その自信は無いみたいだけど。



「つかよ。なんでわざわざチョコ溶かして固めるんだっつの。板チョコまんまの方がずっと美味いだろ」

「ああ。まぁねそれは確かに…って、この年齢になってまでそんなお子様チョコ作るわけ無いでしょ!?」

「大体、何が入ってんのかわかんねぇし」

「……それは…否定できないわね…」



というか、シカマルの場合幼い頃の経験がトラウマになってるだけなのよね。


それはまだ私たちがアカデミーに通っていた頃。
私が10を過ぎたばかりで。
シカマルはまだ8つで。

その年のバレンタインに、いのちゃんはチョコ作ったの。
それはいのちゃんにとって、初めての試みだった。
いのちゃんのパパが過保護で、台所に立たせて貰えなかったってだけなのだけど。

初めてだからってことで、いのちゃんは片抜きチョコを作る事にしたの。
でも、まだ子供だしテンパリングなんて知識も技術もないから、製菓用チョコを湯せんで溶かして型に流し込んで、トッピングをする…ってだけのチョコ。

で、まあいのちゃんの本命はサスケ君だったのだけど、幼馴染のよしみとしてシカマルとチョウジにもくれたのね。

その、チョコが…

ただ溶かして固めただけの筈のチョコが、正直、美味しくなかったの。
どんな風にと聞かれると難しいんだけど…すっごく硬くて風味も無くて…

それ以来、シカマルは手作りチョコを嫌がるようになった。
それがトラウマの序章だったなんて、当時の私たちがどうして気付く事が出来ただろう。

いのちゃんは、本気でサスケ君が好きだった。
恋をした女の子って…とっても大胆で周りが見えなくなっちゃうのよね。

それからキッチンに立つようになったいのちゃんの手元には、必ず怪しげな瓶があって。
それを知ったシカマルは真っ青な顔で「普通に作れ」と怒鳴ったのだけど。
いのちゃんはすっごく真剣な顔で、こう言ったの。

「恋する乙女としては当然の行動よ!」

元々女の子とそんなに親しくしない(というより、面倒だと言って人と関わらない)シカマルにとって、そのいのちゃんの発言は衝撃だったのでしょうね。
その日、真っ白な顔して帰ってきたシカマルは今でも鮮明に覚えてるわ。



それがシカマルのトラウマ。
私から見たらもう過去の笑い話なんだけど、シカマルにとってはそうじゃないらしい。
人から貰った手作りのお弁当やお菓子には一切手をつけない。
相手の女の子に可哀相だなとちょっぴり思う。

確かに私達は忍で、貰うものに警戒しなきゃいけない立場でもある。
でも、いくら忍を生業とした私でも、シカマルほど警戒はしないと断言できる。
だって、私もシカマルも、たかが中忍、たかが特別上忍だもの。



「彼女の手作りくらいは食べれるようになって欲しいわ」

「相手いねぇし。必要ない」

「作る気ゼロね」

「めんどくせぇ」

「…彼女が料理ベタで、でも一生懸命作ってくれたら食べるわよね?」

「………」



沈黙で答えるシカマルは、でも脳内で想像してるのだろう。
それまで目を落としてた将棋の指南書から目を泳がせたのが面白くて、思わず笑ってしまった。




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