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以下、拍手お礼文となります。
中身は就+弁の小話です。よろしければどうぞ!!

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「べ、弁丸はぶけの男子でござるっ!おそろしいなどと、そのようなことはっ」
「そうでしたな。弁丸様はあの、武勇知略名高い真田家の血を宿す者。物の怪や鬼の類などお気になさる筈がございませぬか」
「むろんっ!!」
「何とも勇ましいこと。……ああ、そうだ弁丸様」
「うむ?」
「先程話した女、月の隠れた風雨の夜に現れるのだそうですぞ。野分が近付いておりますから、今宵は暴風雨となりましょう。それに間もなく逢魔が時。……お気を付けめされよ」
「……っ!!」




風が、強い。
昼間は爽やかな秋風だったのに、日没と共に不穏な空気を孕み始めている。

元就は障子を閉め、灯台に火を灯した。小さな炎が心細く室内を照らす。
と、ぽつりぽつりと水滴が地に落ちる音が聞こえてきた。ゆっくりだったそれは段々と速度を上げていき、同時に悲鳴のような風音が響き渡る。

「……来たか」

元就が呟いた時、ゆらり揺らめいた灯火が、不意に消えた。
瞬間、室内を闇が覆う。

「べ、弁丸は暗闇など怖くはっ……」

泣き叫ぶような風音が強弱を付けて暴れ回る。障子がその威力を受けて軋んだ。

「……っ!!」

突如ガタッビタンッダダダと音がしたと思うと、横から衝撃を受けた。何事かと見やれば、小さな影が元就の衣に必死でしがみついている。

「……弁丸」

呼び掛けるが、益々強くしがみつくばかりで返事はない。いつも元気に反応するばかりに、違和感を覚えた。いや、それ以前に、甘える事が無いこの童が元就にしがみついている事自体有り得なかった。つまりそれは、元就自身もそういう状況を経験した事が無い訳であって。したがって子供に抱きつかれてもどうすれば良いか分からない。

――冷徹な智将と謳われる己が、童の対応に困っているなどとは。

突き飛ばす訳にもいかず。灯火を点ける為に立ち上がる事もできず。

とりあえず、その小さな頭に手を置いた。手のひらを広げれば包み込んでしまえそうな程の小さな頭。
その手を荒々しく数度上下させてから、元就は息を吐いた。

動けなければ、仕方が無い。
腹を括るしかなかった。

暴風雨、暗闇に沈んだ室内、幼子と二人。



――たまには、このような日があっても。




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