〜NG集〜
瞼を下ろしたい現実逃避に、抗(あらが)うように深い息を吐き出した。
元来自身を守る機能から逃げるのだ。
現実逃避から逃避したなんて、なんて馬鹿な話。
(現実逃避から逃避しただけで、現実から逃げない人になるなんて馬鹿な考えで)
意識を保つ、視界は今を映しつづける。
変わらず寡黙な部下はハンドルを右に切る。
目的地が変わった。
彼は言われる前に進路を変えた。
「………行き先違うくない?」
カットォォォ!
「いえ、こちらであっておりますよ」
「…でもこっちは方向が逆じゃないか?」
「いえいえ、お医者さんプレイをするのに私服はどうかと思いますのでまずはナース服を買いに…」
「プレ…?」
「私は長年お嬢様に仕えてまいりましたので解っております」
「いや、今から病院…」
「病院でお医者さんプレイとは流石お嬢様です。」
「いや、だから…」
「茜様が病人役でございましょう?」
「え、まぁそうだけど…」
「そうですね、ピンクのパジャマを着ていただいて、お嬢様は水色のナース服なんてどうでしょう?」
「いやどうでしょうといわれても…?」
「あぁ、そうですね。全て私めにお任せください。これでもお嬢様より長く生きている身です。
色々な経験をつんでおりますゆえ」
「…頼もしい」
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